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連載「女ひとり、「釣りバカ」完走してきます【シリーズ8】」

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 釣りと家族に人生を捧げる愛されキャラ・ハマちゃんの一方で、無能な部下に囲まれ、家族関係も冷え切った寂しい老人として描かれることが多いスーさん。
 女好きだったりわがままだったりと困ったキャラも定番化していますが、実は毎回、経営者としてはかなりかっこいい面を見せていることも確か。

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「で、君の意見はどうなの?」

 「1」からほぼ毎回、スーさんが重役たちに尋ねる質問です。
 問われた幹部たちはたいていなにも答えることができず怒りを買うのですが、この一言からも分かる通り、スーさんは個人の考えを最優先し、どんな大プロジェクトであろうとも決定権のすべてを担当者に委ねる深い懐の持ち主なのであります。かっこいー。
 トンマな重役たちには厳しく接する一方で、それ以外の社員や友人に対しての物腰は柔らかく、誰に対しても敬語。さらにプライベートでは社長であることを明かさないことも多く(そもそもそれがきっかけでハマちゃんと友人になったわけですが)、前作の「7」でそれをやられた名取裕子はスーさんにクラっときていました。かっくいー。
 採算を度外視して社会的貢献度の高い案件を引き受けることも多く、ノブレス・オブリージュの精神も持ち合わせた紳士なのであります。

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 そんなスーさんが、第二次世界大戦中、壮絶な戦いとして知られるビルマの「インパール作戦」に参加していたことが判明。負傷した兵士をおぶって逃げたという衝撃の過去がハマちゃんとの会話の中でサラリと明かされます。
 「そもそも第二次世界大戦のときに青年だったのかよ…」という平成っ子な驚きとともに、“生きる昭和史”なスーさんに最敬礼したくなったひとコマでありました。

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 そして今回のゲスト、柄本明&室井滋カップルが織りなすラブストーリーも白眉で、日本兵のような見た目の博士(柄本明)と、医者として働く個性的なキャリアウーマン・和美(室井滋)が、互いに乏しい恋愛スキルを使って歩み寄っていく様が◎なのであります。
 「会話ベタだから歌います」と、突如オペラを歌い出す博士を怪訝な目で見る周囲の一方、そんな彼が愛おしくてたまらないといった感じの和美。周りには理解されなくても、この人の良さは私にだけはわかるーー。そんなはみ出し者同士の純愛が素敵でありました。

 そして絶賛不景気進行中の96年、うんこを拭く紙すらもったいないと言い出すほど節約志向にシフトした鈴木建設や、神々しいほど美しい福島県の夏井川渓谷など、今回も見どころ満載でありました!!


文 小泉なつみ

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