連載「女ひとり、名画座行ってきます。」
【ユーロスペースの巻/後編】
カテゴリ:連載「女ひとり、名画座行ってきます。」
新しいものを求め続ける映画館
秋めいてきた今日、お伺いしているのは渋谷のカルチャーを30年以上にわたって牽引し続ける尖った映画館、ユーロスペースさんであります!
瀬々敬久、真利子哲也などなど、今をときめく監督作をいち早くラインナップしてきたユーロスペースは、どうやって上映作品や特集を組んでいるのでしょうか。前編に引き続き、北條誠人支配人と、岡崎真紀子さんにお話を聞いていきます。
「“マイナー”っていうのはいっこキーワードですね。他のミニシアターが興味示さないもの、ビジネス的に難しいと思う作品を結果的に選んでしまっているんですよねえ。そして選んだ作品って、必ず新しい表現があるし、表現力が強いものなんです。それ以外は意味ないんじゃないかというくらい、僕はこの2点で作品を観ています。まったく意味は分からないけど、なんかすごいってものが大好物。ひとさまがあまり好まないような、味の濃いもの、香辛料が強いものが好きとでもいうかねえ」(北條支配人)
「作家の特集上映でいえば、ただ過去作を集めましたってだけではなくて、テーマをもってきちんと特集をやることで、その監督に新しい価値を付与したいと思っています。
今年7月に亡くなったアッバス・キアロスタミ監督の追悼上映を10月から開催しますが、彼は監督業以外にも写真を撮ったり詩を書いたりと、とっても多才な方だったんです。そんなアッバスの知られざる一面を知ってもらえるような特集にできたらと思っています」(岡崎さん)
「それと、10月からは小林正樹監督の生誕100年記念特集上映もやります。盟友である仲代達矢さんと後輩にあたる篠田正浩監督のトークショーでは、当時の貴重なお話をたくさん聞けるかと。あとは、小林作品の音楽を多数手掛けた武満徹の娘さんである音楽プロデューサーの武満眞樹さん、ギタリストの鈴木大介さんにもお越しいただいて、ミュージシャンから観た映画という視点で語っていただこうかと思っています。
『人間の條件』『東京裁判』『切腹』など、反骨精神溢れる作風で知られる小林正樹監督ですが、実は感情の機微を描く天才。なので、僕のオススメは『この広い空のどこかに』と『いのち・ぼうにふろう』。それと、こだわりを詰め込んだ『怪談』も必見です。その狂気っぷり、完璧主義者っぷりをぜひ見届けていただきたいですね」(北條支配人)
また、奇しくも12月21日にはBunkamuraオーチャードホールにて「没後20年 武満徹の映画音楽」と題したコンサートが開催されるそう。小林正樹監督の「日本の青春」をはじめ、篠田正浩監督の「写楽」、中平康監督の「狂った果実」など、映画好きにはたまらない演目が予定されています。
そして例のごとく、劇場スタッフの皆さんがオススメする近隣スポットにも行ってきましたよ!
【番外編】ユーロスペース北條支配人&岡崎さんオススメスポット
Cafe Bleu (カフェ ブリュ)
北條支配人と岡崎さんがしばしば訪れるというのが、道玄坂の裏手にある「Cafe Bleu (カフェ ブリュ)」。
このお店の素晴らしいところが、10時から24時までぶっ通しで営業しているところ!(休日は12時からOPEN)。アルコールも常に用意しているので、夜勤明けなんかでも飲めるのであります。
女将の岩倉久恵さんは、この営業形態を「4毛作」と表現。モーニング、ランチ、夕暮れ、ディナーと4つの時間帯それぞれに楽しめるのが最高すぎます。エニイ・タイム・酒飲みたい自分はテンションMAXです。
そこでいただいたのが、グランドメニューの「コンニャクと胡桃のゴルゴンゾーラ」。
想像したこともない組み合わせですが、これがもう至福の味。クセのあるゴルゴンゾーラとコクいっぱいの胡桃、そして食感の楽しいコンニャクのタッグによって、味蕾も全開であります。ソムリエでもある岩倉さんがチョイスしてくれた「タケダワイナリー サン・スフル 白(発泡)」との反復運動が止まらない…。
その他にも「プーアルクルミ」(上写真)や「油揚げピザ」など、ひねりのきいたお酒のおつまみが盛りだくさん。ユーロスペースでの映画鑑賞後、ぜひその味わいを堪能して下さい。
そして偶然にも、中学・高校の同級生・稲村卓也くん(33歳)が「Cafe Bleu (カフェ ブリュ)」でバイトをしていました。名刺を持っていますが、「うろこぐも」というお店を10月23日から世田谷に出すそうです。国と銀行と親からン千万を借りて初出店する“イナタク”にエールを送りつつ、ほろ酔いで帰宅しました。ごちそうさまでした!
渋谷区円山町23番9号 平井ビル
03-5428-3472
■うろこぐも
世田谷区世田谷1-15-12
03-6338-3935
(取材・文/小泉なつみ)