連載「女ひとり、「釣りバカ」完走してきます【シリーズ15】」
夏風邪で高熱と黄色い鼻水が止まらないうえ(汚)原稿の〆切も差し迫っているし、そんな時に限って冷蔵庫には刺身パックについていたわさびしかなかったりして泣きたかったのですが、「15」を観たらそんなあれこれが雲散霧消。スーッと爽やかな気持ちになれましたよ!!
本作は小津安二郎の『麦秋』をベースにしているそうですが、それと同時に、2004年の公開時にベストセラーとなっていた酒井順子氏のエッセイ『負け犬の遠吠え』も意識した作りになっています。
ストーリーは、経営コンサルタントとして仕事に邁進した挙げ句、いつの間にか30代になってしまったバリキャリ女性が、結婚も出産もしていない自分の状況に疑問を感じ……というもの。
キャリアウーマンの薫を江角マキコが演じ、グッドルッキングすぎるがゆえに、郷里であり本作の舞台ともなる秋田の友人達からも「なんで結婚しないの?」と今の状況を不思議がられてしまいます。こういう時、美人だとなお一層、風当たりがキツいんですね。
そんな薫の恋のお相手となるのが、筧利夫演じる幼馴染の魚博士、哲夫。恋人も作らず日夜魚の研究に明け暮れる朴訥とした青年ですが、「なにかひとつ好きなことがある人は信用できる」と、薫は昔から彼のポテンシャルを見抜いていました。目利きやね!
特にきゅーんとなったのが、暴力的なリストラ策をクライアントに突きつけることで利益を生み出してきた会社のやり口に疑問を感じ(クライアント先はもちろん鈴木建設)、自身の生き方とともに迷いが生じていた薫に、哲夫が投げかけたこのセリフ。
「なにか仕事で嫌なことでもあったのか。悩み聞いてくれる男はいないのか」
女って究極、男性からのこの問いかけを常に待っているのではなないでしょうか。
日本中の主婦が、おばあちゃんが、未婚女子が、日夜パートナーに対して「とにかく私の話を聞いてくれ!」というサインを送っているはず。ですから男性陣もぜひ一撃必殺のワードとして、哲夫のセリフを覚えておいていただきたいなと思った次第。私自身、ボロボロだった身が晴れやかになったのも、このセリフ効果だったのだと思います。
そして今回もハマちゃんの“ハマちゃんっぷり”は全開で、益岡徹演じる気弱な舟木新課長を手玉に取り、休暇三昧釣り三昧。なぜか釣りの船代まで出すことになってしまう弱腰な舟木課長が大好きになりました。
そしてぜひ注目していただきたいのが、濱崎家に飾られた鯉太郎の書き初め。「元気」などといった子供らしい作品に並んで飾ってあったのは、濱崎家らしいあの熟語2文字でありました。そんな隅々まで目配せの行き届いた「15」、紛いなき傑作であります!
文 小泉なつみ
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「女ひとり、「釣りバカ」完走してきます」
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