映画『釣りバカ日誌』よもやま話 【その18】
【はじめに】
映画『釣りバカ日誌』シリーズは、時代が平成に変わる1988年12月24日お正月映画として、第1作が公開されました。
バブル景気やゼネコン疑惑など移り行く時代を背景に、建設会社の社長「スーさん」と平社員である「ハマちゃん」の釣りを通して結ばれた立場逆転の風変わりな友情を軽やかに描いたこの作品は、2009年に至るまでスペシャル版と時代劇版を含む全22作品が製作された人気シリーズです。
【撮影の思い出】
シリーズ全作品の現場に参加した唯一のスタッフである岩田均さんに、撮影当時のお話を伺いました。
岩田さんのプロフィールは、コチラ
https://www.shochiku.co.jp/cinema/history/interview/vol-4/
【今回の作品】
映画『釣りバカ日誌18』
2007年9月8日公開。
- 三國連太郎さん演ずるスーさんが、会長に就任します。
前作辺りから、「20作目を区切りにしよう」という話が出ていた中で、スーさんが社長を退任して、会長になるというお話になりました。冒頭のエピソード、スーさんが鈴木建設の社員に向けてスピーチをするシーンは、都内の大学のホールをお借りしました。ちなみに、『釣りバカ日誌20』に出てくる、会長を退任するシーンも同じホールで撮影しています。
- 社員の皆さんは、どのような方々ですか。
通常だと公募したり、エキストラ専門の会社にお願いしますが、このシーンは『釣りバカ日誌』に愛着を持っている方々にお願いするべきだ、ということで、原作を連載している「ビッグコミックオリジナル」で募集をかけて頂きました。
- 社員の方々の雰囲気が、画一的でないように見えますね。
たくさんの応募があって、撮影当日は北海道から沖縄まで、日本各地からファンの方が1,000人も参加してくださいました。役者さんだけでは出せない「場の雰囲気」が、画面にも表れていると思います。本当に有難いことです。
社長退任のスピーチ
- 鈴木建設の重役陣も得難い雰囲気ですね。
秋山専務を演じてらした加藤武さんは、三國さんとは長いお付き合いなので、「連ちゃん」と呼んでいらっしゃる位でしたし、他の重役陣も長く出演された方が多く、自然とチームワークが出来上がっていたのでしょう。
- 怒られもするけれども、鈴木会長を大切に思っていることがわかりますね。
普通の映画やドラマの撮影の際、基本的に役者さんはマネージャーさんと一緒にいらっしゃるのですが、初日など節目の日以外は、ほとんどの方が御自身で車を運転して、お一人で撮影所にいらしていました。
- 川島本部長は、村野武範さんですね。
私は映画だけでなく、テレビドラマも大好きでしたので、以前もお話しましたが、「太陽にほえろ!」の竜雷太さんや小野寺昭さんに重役として御出演頂くよう、配役を担当するプロデューサーにお願いしました。その流れでこの作品の時は、これまた大好きだった「飛び出せ!青春」の村野さんに御出演頂きたいと思って、推薦したんですよ。
鈴木建設の重役陣
- この作品は、岡山ロケにもたくさんのゲストの方がいらしていますね。
今回は、メインの高嶋政伸さん檀れいさん以外も、小沢昭一さん、桂小金治さん、渋谷天外さん、石田靖さん、安田大サーカスさん、とゲストの方が多かったので、ホテルの手配や移動の手配なども通常の倍以上でした。大勢で乱闘になるシーンもありますし、にぎやかでした。
- 飛行機の移動ですね。
飛行機と言えば、撮影の前にロケハンの際に、私一人で岡山に向かった時のことです。岡山空港に着いたものの、強風の影響で飛行機がなかなか着陸できません。3回試みたのですが、羽が地面に付きそうになるくらい、風に煽られて、かなり揺れました。航空機のパニック映画である『エアポート‘75』を思い浮かべたくらいです。結局着陸できなくて、高松空港に向かうことになりました。
- それは大変でしたね!
飛行機が着陸できないことは、たまにあります。ただ、この時だけの経験は、10席くらい前にいたお客さんが、岡山空港で着陸を試みている時に、恐怖からか気絶してしまったことです。「お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか」というセリフを、現実で初めて聞きました!その方を救急車で運ぶために、高松空港に着いてからも30分待機になりました。後で聞いたところ、その日は「日本で一番強く風が吹いた日」で、他にも着陸できない飛行機があったそうですよ。
- 岡山の景色は素晴らしいですね。
岡山も画になる場所が多く、撮影場所の候補が沢山ありました。小沢昭一さんが登場される旧家を探していた時のことです。あるお宅に伺った時に「松竹さんですか?映画『八つ墓村』はここでロケをされましたよ」とご主人が仰いました。私は『八つ墓村』の野村芳太郎監督や川又昂撮影監督にもお世話になっていたので、とても御縁を感じました。
- 同じお宅で撮影されたのですか。
いえ、別のお宅です。お世話になったお宅も由緒正しい立派なお家で、石で積み上げられた高台に建てられた、まるでセットのような大邸宅でした。実際にお住まいになっているのですが。
大邸宅前での撮影風景
- 今回のお天気は如何でしたか。
朝原組は、なぜかお天気に恵まれないことが多いのですが、今回はおおむね晴れていたと思います。でも、スーさんと檀れいさん演ずる珠恵が語り合うシーンは、「美しいしまなみ街道の景色を、もう1人の出演者にする!」と意気込んで、景色の良い場所を選んだのですが、曇り空の下だったので、全く写すことができませんでした。
たしかに晴天ではないようで…
- 岡山には、他にも思い出があると伺いました。
映画の『釣りバカ日誌』シリーズが終わった後、2015年にテレビドラマの「釣りバカ日誌」が制作されました。ドラマにも朝原監督以下、映画のスタッフが何人も参加しています。
- 映画では「ハマちゃん」だった西田敏行さんが、「スーさん」を演じたドラマですね。
2019年に放映された新春ドラマスペシャル「釣りバカ日誌~新入社員 浜崎伝助~瀬戸内海で大漁!結婚式大パニック編」の撮影の際、私は製作部のお手伝いをしました。西田さんがロケの撮影にいらっしゃる時に、私が車を運転して、岡山駅にお迎えに伺いました。桃太郎像の前で顔を合わせた途端、「なんだよ!岩っちゃんが来てくれたのかよ!」と驚かれ、喜んで下さいました。
- 岩田さんがお迎えに見えるとは全く思われてなかったのですね。
内緒で伺いましたのでね。本当に久しぶりの再会でした。思い出の「しまなみ街道」を一緒に渡りました。その夜、宴会をした時に、ドラマの出演者の方々に、「『釣りバカ』のスタッフは、日本で最高のスタッフなんだ!」と私を紹介して下さって、最高にうれしい夜でした。ベロベロに酔っぱらいました!
- 忘れられない思い出ですね。
そして次の日。私は紋付き袴の正装で、別の役者さんの吹き替えをしなければなりませんでした。二日酔いの中、慣れない衣裳で帯を締められて過ごし、フラフラになりました。前日と打って変わって、なかなかつらい1日でした…。
- 高松は、映画の第1作目にも登場しますね。
そうなんです。それも朝原さんの故郷だということが、選ばれた一因でもあったので、いろいろな意味で、四国、特に高松は御縁のある土地ですね。
瀬戸内の海で釣りをしてご機嫌のハマちゃん
〈その19に続く〉
映画『釣りバカ日誌』シリーズ
商品 (DVD・DVD―BOX)
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