連載「女ひとり、名画座行ってきます。」
【横浜シネマリンの巻/前編】
カテゴリ:連載「女ひとり、名画座行ってきます。」
間があいてしまいましたが、まだ連載はしぶとく続いていますよ! 今回は「横浜シネマリン」さんにお邪魔したいと思います。
横浜。この地にいろんな思い出を持っている方は多いと思いますが、私自身もそのひとり。はじめて横浜に行った時は駅ビルの多さや規模のデカさ、人の多さに驚愕し、「ここは横浜“国”や…」と思ったものです。そして昔お付き合いしていた横浜国出身の彼が、「レペゼン横浜(横浜代表、みたいな意味ですね)」「横浜至上主義」といった趣旨の発言を常々繰り出していた意味を理解したのでした。
そんな横浜を久しぶりに訪れるにあたり、秘密兵器を用意してみました。
どどん。自撮り棒であります。なんってたって横浜。すてきスポットと自分を一緒に収めたいじゃないですか。
と、前置きが長くなりました。早速「横浜シネマリン」さんに突撃であります!
迎えてくれたのは、美大出身のおしゃれで素敵な支配人・八幡温子さん。
寒いのにすみません…(この日、関東には大寒波が襲っていました)。
そして開口一番、八幡さんは言いました。
「私、この映画館(の会社)を買ったんですよ」
え…マジですか…!
これから映画館をやる方、お金は大変です
「『関内アカデミー』といった横浜の有名映画館が2000年代、一気に5館潰れてしまったんです。そこで元スタッフの方や映画好きの私などが集まって『映画館を再建しよう!』と映画サークル『横浜キネマ倶楽部』を立ち上げたんです。だから漠然と『映画館、できたらいいな』って気持ちはあったんですね」(八幡支配人/以降、「」内同氏)
でもでも、映画館って個人でできるものなんですか。
「電話がかかってきたんです。やりませんかって(笑)。もともと映写機のメンテナンスをしていた方が横浜シネマリンを引き継ぐ予定だったんですけど、資金繰りが難しくてちょっと無理ってことになってしまい、以前から『映画館やりたいやりたい』と言っていた私に白羽の矢が立ったというわけです」
あの、でも、お金とかめちゃくちゃ大変そうな気がしますし、ご家族は反対しませんでしたか…。
「ちょうどその頃、映画美学校の映画館運営講座に通っていて、終業式を終えた直後にその電話があったんです。こんなタイミングでお誘いがあったことにびっくりしながら、『やればなんとかなるだろう』と(笑)。夫も『人に迷惑がかからないんだったら、好きにすれば』と賛同してくれました。でもお金は、本当に大変。私は家業の資金を全部注ぎ込んだんですけど、映画館をこれからやりたいって人がいるなら、まずはお金だと言いたいですね(笑)」
チラシが出来上がると放心状態
しかし八幡さんが支配人になって今年でもう3年目なんですよね。すごいっす!
「映画館って、3年もてば大丈夫って言われているんです。特に、知名度が低い小規模な作品でも『お客さんに観て欲しい!』と思うような映画で集客するためには、『横浜シネマリンでやっているなら、知らない映画だけど観てみるか』と思ってもらえるように、映画館自体のファンになってもらうしかないんです。そのためにも、3年が必要ってことなんですね」
資金と同時に、どんな映画をかけるかも生命線になってくると…。
「企画を考えるときは本当に身を削るような思いです。今ちょうど上映している『小林正樹映画祭』も、うんうん頭を悩ませてラインナップを考えました。なので、チラシが出来上がったときにはもう放心状態でしたね(笑)」
「女ひとり、名画座行ってきます」ならぬ、「女ひとり、名画座やります」だった今回。後編の次回では、生まれ変わった劇場の魅力と支配人おすすすめの激ウマ中華店、そして自撮り棒の成果(?)もお伝えします!
■横浜シネマリン
横浜市中区長者町6-95
045-341-3180
(取材・文/小泉なつみ)