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映画『釣りバカ日誌』よもやま話 【その16】

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【はじめに】
映画『釣りバカ日誌』シリーズは、時代が平成に変わる1988年12月24日お正月映画として、第1作が公開されました。
バブル景気やゼネコン疑惑など移り行く時代を背景に、建設会社の社長「スーさん」と平社員である「ハマちゃん」の釣りを通して結ばれた立場逆転の風変わりな友情を軽やかに描いたこの作品は、2009年に至るまでスペシャル版と時代劇版を含む全22作品が製作された人気シリーズです。

【撮影の思い出】
シリーズ全作品の現場に参加した唯一のスタッフである岩田均さんに、撮影当時のお話を伺いました。
岩田さんのプロフィールは、コチラ
https://www.shochiku.co.jp/cinema/history/interview/vol-4/

【今回の作品】
映画『釣りバカ日誌16』
2005年8月27日公開。

- 今回はにぎやかな作品ですね。
前回の『釣りバカ日誌15』が落ち着いたテイストでしたので、今度は真逆な感じにしよう!ということになりました。タイトルバックからして、新しい社歌を歌うミュージカル風シーンですから。作詞は演出部の2人、作曲は音楽の信田かずおさんです。

- 建設会社にまつわる方々が、たくさん登場しますね。
鈴木建設本社で働く人々から建設現場まで、ということで、社歌のシーンには俳優さんだけでなく、映画の撮影スタッフも登場しています。初期の頃にもスタッフが出演していますが、今回は人数が多かったです。建設現場のカットに出ているのは、照明部、車両部、美術部のスタッフです。

- 本職の方々なのかと思っていました!
現場で働く、という意味では共通項があるからか、皆、堂に入ったものでした。スタッフ同士も部署を超えて仲が良かったので、写っている方も写す方も面白がって撮影したんですよ。撮影したけれど、カットになったスタッフもいましたが。

- 遊び心ですね!
トイレにいるハマちゃんと踊る掃除のお姉さんは、美術スタッフです。歌がある撮影の時は、音楽を流しながらそれに合わせて撮影するのですが、上手いものでした!

- ボビー・オロゴンさんが大活躍ですね。
ボビーさんが大人気だった頃です。感も良く、頭の良い方で、キャスト・スタッフにも大人気でした。「イージス艦に乗り込む」なんて、現実にはあり得ないことで、まあファンタジーですからね。物語で大きいウソをつくために必要な、存在感のある方です。

日米の釣りバカ共演

- よくこのお話を許してもらえましたね。
イージス艦のロケハンに行った時、担当の方がとても親切で、案内しながら、いろいろなことを教えて下さって、「ミサイルにも使用期限があるんですよ」なんて、気さくに色々なことを教えて下さいました。

- 中に入れて下さるんですね。
12月24日に、アメリカ海軍の第七艦隊の佐世保基地に見学に行ったのですが、まさに別世界でした!「ここは特別な場所だ」ということを改めて感じました。アメリカに留学したこともなく、年末に旅行したこともないので、今まで見たことのない盛り上がり方で、「アメリカのクリスマスってこんな感じなんだ!」と強い印象がありました。

- 撮影の許諾はおりたのでしょうか。
「撮影をしたい」という相談自体は、横須賀基地経由で、なんとアメリカ本国のペンダゴン(国防総省のこと)にお伺いを立てるところまで行ったそうです。最初は、佐世保の基地で撮影させて頂けそうだったのですが、1か月後に「ハマちゃんが酔って基地に入ってしまのは看過できない」ということで、基地の中での撮影はお断りとなりました。

- 門前払いではなかったのですね。
「返事に1か月かかる」と言われていたのは、アメリカ本国に聞くためだったのです。「そんな話を映画でされては困る」とは言われませんでした。門を乗り越えるシーンはないけれども、門の前では撮影しているのです。中での撮影はダメだけれど、映画自体は良いとも悪いとも言われませんでした。

後で大変なことになるとも知らずに…。

- 荒唐無稽なのによく怒られなかったですよね。
現実のイージス艦の上は、電磁波が張り巡らされていて人が歩くことも出来ません。ボビーは素手でミサイルを運んでいたり、ハマちゃんのひげや髪の伸びる速さは異常ですからね。それは映画のお楽しみということ、だったのかな?

- ハマちゃんはここでも、魚を釣っています。
深海魚は、あんなカラフルじゃないでしょう!捕まえられた後に鳴き声をあげたり、不思議な魚です!ちなみにこの魚を準備をしたのは、社歌のシーンで、トイレの中でハマちゃんと踊った美術助手さんです。絶妙にヌルヌルして魚みたいなものが出来あがってきて、皆、大喜びでした。

- 魚が鳴くのですか!
鳴き声は、編集が終わって最後の段階の仕上げの際に、イージス艦でのシーンを見ていて「何かもの足りない」ということで、たまたまその場にいた私の助手の女性スタッフの声を入れました。演出部さんの指示で、「ク―」「ピー」「キュー」といった全く意味はない謎の声を、たくさん出していました。「もっとバリエーションはないの!いいから鳴け!」と謎に怒られながら!その声を加工して使っているんですよ。

- ロケはいかがでしたか。
教会のシーンのために、長崎の教会を20か所くらい回りました。隠れキリシタンの地ですからね、本当に美しい教会があります。蝶の羽のステンドグラスがある教会や、住民が作ったという黒島の教会など。あまりに素晴らしいので「どうしてツアーを組まないのですか」と聞いたら、キョトンとされていました。

- 予想外の質問だったのでしょうね。
日常で当たり前になっていたのかもしれませんね。その後に、本当に教会を巡るツアーを組んだそうです。「暮らしている方が気が付いていない、日常の素晴らしいところに光を当てる」のは、映画『釣りバカ日誌』シリーズが大切にしてきたことなので、この時のことも、とても印象に残っています。

- 佐世保の街は、魅力的ですね。
国際色豊かで、活き活きとした街で、キャストスタッフの皆も、空いた時間に佐世保バーガーや美味しいものを沢山食べて、楽しそうでした。今回の作品の舞台に相応しい街ですよね。

- 尾崎紀世彦さん演ずるテリーのお店は実際にあるのですか?
いかにも。あの街にありそうなお店でしょ?空き時間には、キャストスタッフも、店内でくつろいでいました。でも、あのお店はセットです。演奏シーンもあって、撮影時間が長かったので、力を入れて作りました。こだわりにこだわったので、予算的にも、このセットに注力しました。それで、この時だけ、シーン自体も少なかったこともありますが、営業三課はセットを組まずに、ロケで撮影したんですよ。

活気あふれる作品!

- 最後の佐世保港のスーさんのセリフが印象的ですね。
今回は、社歌の大合唱あり、ミュージカルシーンあり、尾崎紀世彦さんと西田さんのデュエットあり、イージス艦での大騒ぎありと、ドタバタの明るい作品ですが、このシーンでは、さりげなく、三國さんご本人が体験されたことを語られています。映画『釣りバカ日誌』に奥行を感じることが出来るのは、こういう部分なのではないでしょうか。

佐世保港にて

〈その17に続く〉

映画『釣りバカ日誌』シリーズ
商品 (DVD・DVD―BOX)
https://www.shochiku-home-enta.com/c/series-turibakanisshi

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