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映画『釣りバカ日誌』よもやま話 【その11】

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【はじめに】
映画『釣りバカ日誌』シリーズは、時代が平成に変わる1988年12月24日お正月映画として、第1作が公開されました。
バブル景気やゼネコン疑惑など移り行く時代を背景に、建設会社の社長「スーさん」と平社員である「ハマちゃん」の釣りを通して結ばれた立場逆転の風変わりな友情を軽やかに描いたこの作品は、2009年に至るまでスペシャル版と時代劇版を含む全22作品が製作された人気シリーズです。

【撮影の思い出】
シリーズ全作品の現場に参加した唯一のスタッフである岩田均さんに、撮影当時のお話を伺いました。
岩田さんのプロフィールは、コチラ
https://www.shochiku.co.jp/cinema/history/interview/vol-4/

【今回の作品】
映画『釣りバカ日誌イレブン』
2000年2月5日公開。 

- この作品で、監督が交代となりました。
前作の『花のお江戸の釣りバカ日誌』まで、11作品のメガホンを取られた栗山富夫監督から、大船撮影所で20年くらい後輩にあたる本木克英監督にバトンタッチされました。本木監督は、1998年に喜劇である映画『てなもんや商社』でデビューされていて、この作品が2作目でした。

- ずっとシリーズに参加されていたのですか。
全作品ではなく、第1作目と第5作目に助監督として参加されていました。また『釣りバカ』ではスタッフが小さい役で出演することが珍しくなかったのですが、本木さんも浜崎家のテレビに映るリポーターの役で出演されています。

- 撮影所の他の作品に参加されていたのですね。
木下惠介監督、『釣りバカ日誌スペシャル』を撮影された森﨑東監督など、いろいろな組に助監督として参加し、勅使河原宏監督の『利休』でスタッフとして三國さんとも御仕事をされていました。

- 新人監督がご担当ということで、雰囲気は変わったのでしょうか。
それに加えて、今まで製作の現場となってきた大船撮影所が2000年6月末で閉鎖されることが決まっていたので、シリーズとしては「大船で撮影する最後の作品になる」という思いが強くありました。

大船撮影所で組まれた最後の浜崎家のセット

- 職場が無くなることがわかっている、というのはつらい状況ですね。
閉鎖までの期間に撮影される作品は限られていたので、「撮影所に所属しているスタッフがなるべく多く参加できるように」ということで、監督の交代もあってですが、スタッフ編成が今までと一部変わりました。私自身もこの作品はプロデューサー側で参加しましたので、関わり方がいつもと違いました。

- 撮影所の閉鎖が関係しているのですか。
いえ、撮影の準備をしている期間に風邪をひいて注射を打ったのですが、その後に「アナフィラキシーショック」で倒れたのです。築地の松竹本社で仕事をしていた時だったのですが、救急車で運ばれました…。

- 大変でしたね。
無事回復してその後に体調の問題はありませんでしたが、周りが心配してくれたことと、撮影所の状況もあったので撮影現場のほとんどに立ち会う、といういつものスタイルは念の為避けることにしました。

- いつもと違うお仕事で、印象に残っていることはありますか。
脚本の山田洋次監督ともキャスティングの相談をしたのですが、難航して叱られ気味の時もありました。でも、そんな時は共同脚本の朝間義隆さんが助け舟を出してくれました。私は以前、朝間さんの監督作品に参加していて近しい間柄だったので、心強かったです。

大船撮影所で組まれた最後の営業三課のセット

- 沖縄ロケはいかがでしたか。
2週間位の都内ロケを終え沖縄ロケに出発したのですが、初日から曇り空でした。
台風がきていたからです。しかも当時「戦後3番目の大きさ」という台風で、翌日にロケ地の久米島に行くことになっていたのですが、交通期間がマヒして3日も足止めになりました。

- 撮影できないですよね。
現場のスタッフには思わぬ休日で、悪天候の中それなりに楽しかったようです!でも3日後、久米島に渡り、海に浮かぶロケ地の「はての浜」の下見に行ったら、島の形がロケハンの時と変わっていました。サンゴ礁のかけらや貝殻でてきた砂洲なので、強風と高波で変わってしまっていたのです。

島の形が変わる程の台風の後の撮影

- 釣りのシーンも、日本海とはまた別の迫力がありますね。
本木監督のこだわりで、今回は実際に魚を釣る形での撮影をすることになりました。ロケハンの時に、沖のパヤオ(ブイから鎖を垂らして作っている人口の漁礁)では、釣りの素人であるスタッフでも簡単にシイラやマグロが釣れたからです。

- 宇佐美を演ずる村田雄浩さんが小舟を操縦されていますね。
あの船は沖縄独自の漁船でサバニと言います。村田さんは本隊に先んじて沖縄入りして、特訓されました。最初は苦労されていたようですが、上達されて劇中でも立ったまま操縦されています。

- すぐに釣れたのですか。
劇用の竿を複数用意して、釣り師の方が釣ったところで西田さん村田さんに渡す、という段取りだったのですが、西田さんの竿に実際にキハダマグロがかかって、そのシーンは実際に使われています。でも、監督が望んでいるシイラを二人が同時に釣る、という状況にはなりませんでした。

- どうされたのですか。
翌日は場所を変えて、何班にも分かれて、かかったらすぐに対応できるようにしました。
西田さん村田さんは、撮影だけでなく食事も休憩も含めて、何時間もあの不安定なサバニで過ごされました。真っ黒になられてますよね。なかなか、かからなかったのですが、最後、時間ギリギリのところで奇跡的にシイラがかかり、何とか撮影することができました。

- 何故釣れなかったのでしょうか。
台風の影響で、パヤオの鎖が切れて魚が集まらなくなってしまったのかもしれない、と現地でお手伝いして下さってる方はおっしゃってました。いずれにせよ台風に振り回された沖縄ロケでした。

シイラを釣ったハマちゃん

- ヤキモキされたでしょうね。
と、いう報告が毎日届いていました。私は東京に残りましたので、「起きたことに対してどうするか」という処理や戻ってきてからの東京でのロケの準備をしていたからです。

- 都内のロケで印象的なことはありますか。
スーさんの出勤シーンで「ハーレーダビッドソン」が登場します。台本上は、笹野高史さん演ずる前原運転手が運転して、スーさんはサイドカーに乗ることになっていました。でも、三國さんは「私が運転した方が良いんじゃないでしょうか、免許も持っていますし」と、仰いました。

- 普段から乗られていたのでしょうか。
いえいえ。久しぶりに乗られたと思います。空き時間に練習されていたのですが、1,000CCを超えているハーレーは、エンストをくり返し、簡単に運転できません。スタッフは勿論、サイドカーに乗る笹野さん、立ち会っているハーレーダビッドソン社の方など、みな心配げに見守っていました。

- ドキドキしますね。
テストでは、門にぶつかって傷をつけてしまいました。まあ、そんな簡単にはいきませんよね。アハハハハ!

- えええええ!
でも練習する内に乗りこなされて、本番は一発OKでした。大変でしたけど、確かに三國さんがおっしゃるように、スーさんがハーレーに乗っている方が断然良いですよね。何より、かっこよかったですから!

颯爽と出勤

〈その12に続く〉

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https://www.shochiku-home-enta.com/c/series-turibakanisshi

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