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映画『釣りバカ日誌』よもやま話 【その3】

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【はじめに】
映画『釣りバカ日誌』シリーズは、時代が平成に変わる1988年12月24日お正月映画として、第1作が公開されました。
バブル景気やゼネコン疑惑など移り行く時代を背景に、建設会社の社長「スーさん」と平社員である「ハマちゃん」の釣りを通して結ばれた立場逆転の風変わりな友情を軽やかに描いたこの作品は、2009年に至るまでスペシャル版と時代劇版を含む全22作品が製作された人気シリーズです。

【撮影の思い出】
シリーズ全作品の現場に参加した唯一のスタッフである岩田均さんに、撮影当時のお話を伺いました。
岩田さんのプロフィールは、コチラ
https://www.shochiku.co.jp/cinema/history/interview/vol-4/

【今回の作品】
映画『釣りバカ日誌3』
1990年12月22日公開。同時上映『男はつらいよ 寅次郎の休日』


- 3作品目ということで、シリーズとしての軌道に乗ってきた感じだったのでしょうか。
続編ではない形で、2作目が作られましたが、お客様にも自然に受け止めて頂いた様で、ますます好評でした!それが、3作目につながったのですが、それでも「これから長いシリーズになるぞ!」という雰囲気は全くなく、「新しい作品を作るチャレンジ!」という感じでした。
個人的には、この作品から、私自身の関わり方が変わりましたので、映画スタッフとしての自分にとって、分岐点となりました。

- 仕事内容が、変わられたのですか。
今までは、演出部の助監督として、参加していましたが、この作品から大船撮影所の契約社員となり、製作部の一員になりました。助監督は、監督の演出意図を理解してシーンを作り上げ、手足となって動くことが主な仕事ですが、製作部は、予算を守った上で、作品の完成に向けて、撮影を進める役割を担うので、ロケ場所の選定を中心になって行ったり、と手掛ける仕事の範囲も広がりました。

- 役割の違いについて、もう少し教えて頂けますか。
演出部と製作部は、作品を作る上でのベクトルは、同じ方向を向いています。でも、監督の思いや、やりたいことを広げる演出部と、予算の管理をする都合上、やりたいこと全てを許すことが出来ず、せばめていかなくてはならない製作部という大きな役割の違いがあります。なので、2つの部は、、常に密に連携を取っていく必要があるのです。

- 『釣りバカ日誌』ならではの、製作部のお仕事はありますか。
やはり、「釣り」に関するシーンの準備でしょうか。普通の映画では、海辺に行くことはあっても、こんなに、登場人物がひんぱんに、釣りに出かけないですよね?台本に基づいた演出を想像しつつ、撮影用の魚を準備したり、使用する船の手配や撮影場所を選定することも、製作部の仕事です。

- 撮影で使う場所の交渉などをされるということですか。
今回、水中で魚が泳いでいるシーンがありますが、油壷の水族館の水槽を借りようと、相談に行ったら、「水族館で魚を釣るとは、何事ですか!?」と、怒られてしまいました。それで、次の手として、今回のロケ地だった城ヶ島の漁港で、水産業者の水槽トラックを借りて撮影しました。

- 冒頭の釣り船が出向するシーンは、どちらで撮影されているのでしょうか。
金沢八景のつり舟「太田屋」さんの前です。https://ootaya.net/
八景島の周りは、漁場として有名で、たくさんの釣り人が、こちらの船で釣りに出かけています。
撮影用の船も、お願いしていましたし、本当にお世話になりました。シリーズが進むにつれて、太田屋さんは、スタッフや役者さんと気ごころ知れた仲となり、毎年の再会を楽しみにしていました。
釣り宿「太田屋」前で、遅刻しているスーさんを、ヤキモキして待っているハマちゃん

- スーさんとハマちゃんをヒラメ釣りをしている星が浦は、どのあたりでしょうか。
西伊豆の堂ヶ島付近です。実際の地名にすると、劇中にでてくる様なリゾート開発の話が、意味を持ってしまうので、架空の名前にしています。当初の台本では、初めて、みち子さんも一緒に旅行して、三人でヒラメ釣りをすることになっていて、実際に撮影をしていました。うまく撮影できて、良いシーンになったね、と安心したところで、なんと、あれまあ!台本が変更になり、みち子さんは旅に出ないことになりました。なので、公開時に作られたパンフレットの写真には、幻のみち子さんの釣り姿の写真が残っているのです。伊豆のロケには2度行きました。まだ優雅な時代だったのです。

- みち子さんの釣りのシーンも観てみたかったですね!
脚本が変わったことで、五月みどりさんが、釣りのシーンに参加することになりました。当初の設定では、旅館の女将だったので、釣りの予定はなかったし、職業も変わって、カラオケの先生になりました。それだけでも、びっくりなのに、ハマちゃんスーさんのアドリブ合戦は、更に磨きがかかっていて、ラストから本番まで同じ芝居にならないし、それはそれは大変だったと思います!
ハマちゃんとスーさんは、ヒラメ釣りで雪子(五月みどり)に出会い…

- 営業3課のシーンではTARAKOさんが出演されています。
ちょうど「ちびまる子ちゃん」のアニメが爆発的に人気が出ていたころでした。声優やナレーションの御仕事は、多くされていたけれど、映画でのお芝居は、初めてだったのではないでしょうか。最初は、地声でお芝居をされていましたが、「まる子ちゃんの声で御願いします!」という栗山監督の注文で、TARAKOさんが、声を変えた途端、「おお!まるちゃんだ!」と現場で大きな笑いがおきました。もちろん、劇場でも!
営業三課のシーンは、谷啓さん演じる佐々木課長の下、女性社員も、戸川純さんを筆頭に、個性豊かな方々が毎回出演されていて、作品が更に楽しいものになったと思います。
ハマちゃんと営業三課の課員たち(左端 TARAKO、右端 戸川純)

- 社長室で行われるハマちゃんの懲罰委員会もお楽しみの1つですね。
社長室のセットは、脇の隠し部屋に、スーさんの釣り道具が飾ってあることもあれば、ごくごく普通の部屋の時もあり、と毎回変わっています。今回は、美術デザイナーが提案して、特徴的な間仕切りが置かれました。一般的に社長室に置かれる様なタイプのものではなく、ガラスが入っていて、面も均一ではない、少し変わった格子を使用しています。この格子を使うことで、「手前にいるハマちゃんと重役たちと、奥にいる社長であるスーさん」という図式が、より際立ちました。役者さんも生き生きと芝居をされて、立体的で面白いシーンになっていますよね。
社長室のハマちゃん、佐々木課長と重役たち

- 「毎回違う」と言えば、スーさんですが、今回はまた一段とあざやかな衣裳がカッコいいですね!
冒頭の東京湾の釣りのシーンの時でしたが、その日は撮影初日で、アロハシャツにサングラスで登場された三國さんに皆、ビックリしたんですよ。ちょっとやさぐれて、派手目な感じで。この社長室のスーツも個性的ですよね。毎回、台本を綿密に研究されいて、今回は、このテイストの洋服を着ているスーさん像を作り上げていらしていました。「同じ役を演じない」ことを貫かれいたことが、よくわかりますよね。

社員たちもビックリ!

〈その4に続く〉

映画『釣りバカ日誌』シリーズ
商品 (DVD・DVD―BOX)
https://www.shochiku-home-enta.com/c/series-turibakanisshi

土曜だ!釣りバカ!
BSテレ東にて、毎週土曜放送中
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