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連載「女ひとり、「釣りバカ」完走してきます【シリーズ12】」

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 都知事を辞職したばかりの青島幸男が鈴木建設の重役・高野に扮して登場した「12」。その高野が猛烈サラリーマンとしての人生を終え、“晴耕雨読の生活”を送ろうと故郷の山口県萩市に隠居することから物語が始まります。
 『無責任一代男』の歌詞などを手がけ、サラリーマン人生を皮肉たっぷりに表現していた青島幸男が実直な勤め人を演じ、田舎暮らし紹介番組『人生の楽園』(テレビ朝日)でナレーションを務める西田敏行が無責任サラリーマンを演じるという、なんともおもしろい構図となった今回。テーマはずばり、「リタイア後の人生」でありました。

 東京生まれ東京育ち、コンクリートジャングルが遊び場だった自分も、ぼんやりとした田舎への憧れがあります。高野が語っていた「雨が降ったら昼寝をし、晴れの日は釣りに出る」引退後の暮らしに惹かれ、「自然に身を委ねた暮らしというのはどんな心地がするものかしらん」と思いを馳せました(また高野の生家が萩の旧家で趣があって素敵こと!)。
 そうしてしばらく目を閉じて考えを巡らせていると、私のまわりをブンブンとコバエが。ムキになって追い払っていると、今度はベランダでコガネムシがひっくり返っているのを発見。そうこうしているうちに出かける時間になり外に出てみると、玄関前には長いミミズがぺしゃんこになっていました。そこでやっと自分が虫嫌いだったことを思い出したのであります。
 そんなわけで「12」を観て数時間後には田舎暮らしを諦めた私ですが、そもそも本シリーズのロケは常に自然へと誘う強力なパワー、魅力があるんですよねえ。

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 晴耕雨読の暮らしが手に入ったのもつかの間、高野は病に倒れ亡くなってしまいます。しかし彼の選んだ「ハッピーリタイアメント」という道は、スーさんや佐々木課長、また働くすべての人に対し、「お前たち、次はどうする?」と、第二の人生計画を静かに突きつけたのでありました。
 そしてハマちゃんは高野の葬儀にかこつけ、12日間連続で会社を無断欠勤。佐々木課長がその場しのぎの言い訳をするハマちゃんに、「そういう言い訳が通用する時代は終わったの」と冷たく言い放っていましたが、本作の公開年は2001年。すでに営業三課のパソコンはノート型になっていて、ゆるりと働けた時代は終わったのだなあと痛感させられました。

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 そして今回、美しさがただ事ではない宮沢りえと吉岡秀隆も登場。萩を舞台に爽やかな恋物語が綴られています。ぜひ「萩の月」と共にお楽しみください!


文 小泉なつみ

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釣りバカ日誌12

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