連載「女ひとり、「釣りバカ」完走してきます【シリーズ11】」
中高時代の同級生に、加藤くんという男の子がいました。
スポーツができるわけでもイケてるわけでもなかった彼は、女の子と目を合わせてしゃべることができないほどのシャイ・ガイでもありました。でもたどたどしい会話から彼の心根の優しさが伝わってきて、好感を抱いていたのであります。
しかし若さゆえの浅はかさで、当時の自分は加藤くんが気になりつつも、サッカー部とかラップしてるとか私服がイイ感じだとか、ぱっと目に見える部分でのかっこよさばかりに惹かれ、うまくいけば付き合ったりしていました。
そんなことを思い出したのは、「11」で村田雄浩扮する宇佐美が、加藤くんとダブったからでしょうか――。
鈴木建設資材部管理課に勤める宇佐美は、不器用を絵に描いたような男。入社以来、ハマちゃんと同じ営業三課で働くOL志乃(桜井幸子!)に想いを寄せているものの、なにもできずにいます。
そんな折、ひょんなことから志乃が飼っているうさぎを譲り受けることになった宇佐美は、ようやっと彼女と話すことができるように。しかし営業三課の同僚の目の前で突然大きな花束を渡してしまったり、志乃から部屋に誘われたのに脱兎のごとく帰ってしまったりと、恋愛スキルのつたなさを露呈します。
宇佐美は会社の中で目立つタイプでもなければ仕事ができるわけでもなく、花形部署にいるわけでもない、極めて地味なサラリーマンです。加えて見た目がいいわけでもなく、私服がかっこいいわけでもありません。
それでも志乃を想う気持ちと実直さは人並み以上であり、「結婚するなら彼のような人がいい!」と思ってしまいました。
かつて喉から手が出るほど欲しかったかっこいい彼氏やお金持ちの男や仕事ができるモテ男の先輩も、35歳のばばあとなった今はどこか空虚な存在に感じます。
そんなことにうっすら気づき始めた頃から、加藤くんの顔がちらつくようになりました。風の噂という名のFacebookによれば、彼は結婚して幸せな家庭を築いているそうです。うん、納得!
そして宇佐美と志乃の恋愛模様と平行して描かれるのが、不況真っ只中の鈴木建設におけるリストラ問題。頭を悩ませ過ぎているのか、かなり寡黙で出番も少なめなスーさんの一方、相変わらず勤労意欲ゼロのハマちゃんは釣り三昧でガハハ笑い。優しい八郎がまっとうな説教をしてしまうほど、その無責任っぷりはハンパなかったです。
己の未熟な恋愛を思い起こしてしまった「11」ですが、トロピカルな沖縄の景色も今にぴったり! なので、ぜひオリオンビール片手にお楽しみください!
文 小泉なつみ
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