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小津安二郎「晩春」デジタル修復レポート(全3回)

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“キズや縮み等の問題が多く、状態が良いとは言えなかった「晩春」がいかに現代に蘇ったか。”日本が誇る巨匠の作品に国際的な技術を結集することで本デジタル修復版が完成しました。
「東京物語」や小津カラー4作品の修復に携わってきた本作の撮影助手を務めた川又昻氏とその川又氏に師事した近森眞史氏の監修により、小津監督の狙いに忠実に丁寧に画調を再現しています。
この完成までの軌跡を、全3回に渡りお届けします。

1
第一回 プロジェクト始動
 小津安二郎監督(1903〜63)の名作「晩春」(1949)がデジタル修整され、9月某日、東京・五反田のイマジカ試写室で初号試写が行われた。会場には、クラウドファンディングの支援者を含め関係者30人近くが集まり、終映後は盛大な拍手に包まれた。オリジナルネガが現存せず、後年作られたネガや上映用フィルムも、キズや縮み等の問題が多く、状態が良いと言えなかった「晩春」がいかに現代に蘇ったか?その足跡を追う。
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2
第二回 笠智衆が猫の目に…
 「晩春」の監修を任された撮影監督の近森眞史は原盤の状態について、こう語る。 「お手上げですよ。画面では雨がザーザー、画面が揺れる。つまり、傷が多い。埃が付いている。すごく状態が悪いわけです。フィルムは暑さ、寒さで伸縮してしまい、形が変わってしまう。そうすると、フィルムの穴に入っていかないわけで、どんどんずれていき、揺れが起こる。今ではフィルムセンターの保管庫から外に出すのに、3日かかるような…
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3
第三回 国際タッグ
 「晩春」の修復を手掛ける米ニューヨークのシネリック社は1982年創業で、ジョン・フォード監督の「怒りの葡萄」(1940)や「わが谷は緑なりき」(1941)、ユル・ブリンナーとデボラ・カー共演のミュージカル「王様と私」(1954)、エリア・カザン監督の「波止場』(1954)などを手がけてきた世界的な修復会社である。ほかにも、ソニーとタッグを組み、世界初の4Kの高画質復元にも挑戦。モノクロでは、スタ…
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4
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小津安二郎監督が、初めて娘の結婚や親の孤独を描き、以降の作品群の基軸ともなった記念碑的作品。
本作は、原節子の記念すべき、小津作品出演第一作です。当時の映像が最先端の修復技術で現代に蘇りました。