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映画『釣りバカ日誌』よもやま話 【その17】

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【はじめに】
映画『釣りバカ日誌』シリーズは、時代が平成に変わる1988年12月24日お正月映画として、第1作が公開されました。
バブル景気やゼネコン疑惑など移り行く時代を背景に、建設会社の社長「スーさん」と平社員である「ハマちゃん」の釣りを通して結ばれた立場逆転の風変わりな友情を軽やかに描いたこの作品は、2009年に至るまでスペシャル版と時代劇版を含む全22作品が製作された人気シリーズです。

【撮影の思い出】
シリーズ全作品の現場に参加した唯一のスタッフである岩田均さんに、撮影当時のお話を伺いました。
岩田さんのプロフィールは、コチラ
https://www.shochiku.co.jp/cinema/history/interview/vol-4/

【今回の作品】
映画『釣りバカ日誌17』
2006年8月5日公開。

- 前作『16』は新しい社歌の下、ミュージカル風に始まりましたが、今回は打って変わって、「春眠暁を覚えず」といった感じの冒頭です。
シリーズの中で、「ドタバタ風のお話」「おだやかな話」と両方の物語を描くことで、メリハリをつけることを意識してきたことを、今までもお話してきていますが、今回は正に「おだやかなお話」の方です。

- 桜の美しさも印象的ですね。
東京の桜をこんなに写しているのは、この作品だけかもしれません。この作品の時は、ハマちゃんとスーさんがお昼休みに、ちょっと会うシーンから撮影が始まりました。にぎやかではないですが、桜のおかげで、いかにも「春」のふわっと明るいムードで物語をはじめられました。

桜の開花と共にクランクイン

- 再雇用の話も出てきます。
ちょうどこの頃、企業の再雇用のニュースなども聞かれる様になった時期ですね。今では「寿退社」は、ほぼないと思いますし、通して観ると社会が少しずつ変わってくことが分かりますね。

- ゲストの石田ゆり子さん演ずる弓子も離婚していることを、すぐ言い出せなかったりします。
今は、結婚した方が姓を変えるかどうかは自由でしょうし、そもそも離婚したことで、ここまで悩まないのでは?どうでしょう、違うかな。まあ個人個人によるかな。シリーズ物の映画は、社会を定点観測している様なところがある気もします。

ハマちゃんと電話で話している弓子

- ロケ地の石川県も、美しい景色ばかりですね。
輪島は職人の街、兼六園やできたばかりの二十一世紀美術館など、この時も広範囲にわたってのロケをすることが出来ました。

- 今回の地方ロケ撮影で印象的だったことを教えて頂けますか。
輪島の皆さんとの思い出も数多いのですが、弓子の兄役を演じた片岡鶴太郎さんとは、1991年に製作されたオリジナルビデオ『男の純情集団』(松原信吾監督)で御一緒して以来の再会でした。その撮影が終わる時に、御自分の台本の背表紙に、私の似顔絵をサラサラっと描いて下さって「はい、これあげる」と下さったんです。その時以来でした。

- 創造的なお仕事の役がピッタリですね。
『17』の時は画家になられてましたが、その時にはまだ画家になられていなかったと思います。漆工芸が積み重ねてきた歴史や創造性にも、とても興味を御持ちで熱心に見学されていました。根底で響き合うところがあるのかもしれません。「こんな職人さんいるかもしれない」と思いますよね。。

- ちなみに今回は似顔絵は?
はい!今回もまた似顔絵を描いて下さいました。私は時を経て、2枚も似顔絵を描いて頂いたのです。今も、大切に持っています。

実際の工房での撮影

- 撮影をしているお宅も素晴らしいですね。
ロケで借りたのは、代々、漆器の御仕事をされている大崎庄右衛門さんという方のお宅です。撮影の際は、街中が全面協力して下さり、良い画をたくさん撮影することが出来ました。漆器の美しさに魅せられて、出演者スタッフとも、お土産屋や自分の記念として、手の届く範囲でお買い物をしている人が、結構いましたよ。

キリコ祭りで再会

- キリコ祭りも幻想的です。
この時のお祭りも再現して頂きました。予定していた日程が雨で中止になりましたが、仕切り直しになった後も、ほぼ同じ人数の方が参加してくださいました。

- 1シーン1カットのシーンがありますね。
このシーンは、大掛かりで細かい準備が必要な撮影でした。ハマちゃんスーさんと弓子と大泉洋さん演ずる透が会い、さらに弓子の姪が迎えにくる、という一連です。その長いお芝居を、カットを割らずに撮影しています。普通は、カットを割って撮る分量です。

- かなり後ろの方の風景も入っています。
撮影は、テストを含めて何度も同じ作業を繰り返しますので、エキストラやお祭りの再現をする方々には、長時間参加して頂きました。特に大変だっただろうな、と思うのは、後ろの方の風景にあたる場所にいて下さる方々です。その場所からは、出演者の方も撮影隊も全く見えません。テストの度に、トランシーバーで撮影現場から状況を聞いた演出部の指示で、動いたり止まったりして頂きました。

- 見えないと何が起きてるかよくわからないでしょうね。
たぶん、皆さま、出来上がった作品をみて「あ、こういうことだったのか!」と、初めておわかりになったのではないでしょうか。もちろん、御説明した上で御願いしているのですが、ピンと来ていなかったでしょう。

幻想的なお祭り

- ロケ地の能登は、この作品の後、地震で大きな被害を受けました。
街の風景は変わりました。大崎さんの御宅も、受け継いできた漆の壺が、地震で割れてしまいました。地元の酒蔵も地震の影響で、蔵に住み着いていた菌がいなくなってしまい、同じお酒が造れなくなりました。建物や蔵は建て直すことができても、永遠に失われてしまったものが、たくさんあるのです。

- 撮影の時にご一緒した方々の気持ちを考えると、胸が痛みますね。
『6』の釜石の時もそうですが、この映画の中で、今は失われた景色を観ること出来ます。『釣りバカ日誌』シリーズは、ハマちゃんやスーさんが出かけた先の、「土地土地の文化や景色」と共に物語を展開しているので、結果として、「無くなっていく文化や景色を残す」記録的な役割も果たしているのかもしれません。当時は、意識していなかったことですが…。

〈その18に続く〉

映画『釣りバカ日誌』シリーズ
商品 (DVD・DVD―BOX)
https://www.shochiku-home-enta.com/c/series-turibakanisshi

土曜だ!釣りバカ!

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