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映画『釣りバカ日誌』よもやま話 【その1】

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【はじめに】
映画『釣りバカ日誌』シリーズは、時代が平成に変わる1988年12月24日お正月映画として、第1作が公開されました。
バブル景気やゼネコン疑惑など移り行く時代を背景に、建設会社の社長「スーさん」と平社員である「ハマちゃん」の釣りを通して結ばれた立場逆転の風変わりな友情を軽やかに描いたこの作品は、2009年に至るまで全22作品が製作された人気シリーズです。

【撮影の思い出】
シリーズ全作品に参加した唯一のスタッフである岩田均さんに、撮影当時のお話を伺いました。
岩田さんのプロフィールはコチラ
https://www.shochiku.co.jp/cinema/history/interview/vol-4/


- このシリーズに参加することになったきっかけを教えて頂けますか。

当時、私は、「松竹大船撮影所」で助監督として働いていて、木下惠介監督をはじめとして、様々な監督の作品に演出部として参加していました。深作欣二監督の映画『上海バンスキング』の撮影現場で上海ロケに行った時、ホテルで同室だった先輩助監督のイビキと歯ぎしりが凄まじくて眠れず、廊下で寝ていたら、こちらも先輩助監督だった栗山さんが「自分の部屋に来いよ」と誘ってくれました。
当時、栗山さんは、監督第1作である『いとしのラハイナ』(83)が、興行的にうまくいかなかっったのでガッカリしていました。
一緒に酒を呑んで、「落ち込むことないよ!これからじゃない。次に監督する時は俺が助監督につくからさ!」と話したのを覚えています。後に、栗山さんは、シリーズの一番目の監督として、メガホンを取りますので、今にして思うと、それが、私が映画『釣りバカ日誌』と初めて携わった日だと思います。

- その後、すぐに映画化されたのでしょうか。
その後、約束通り『俺ら東京さ行くだ』(85)、『祝辞』(85)と、続けて栗山監督の作品に参加させてもらいました。翌年、『釣りバカ日誌』と同じく、やまさき十三先生、北見けんいち先生が原作を書かれた『愛しのチィパッパ』(86)が撮影され、この映画化が認められて、映画『釣りバカ日誌』の監督に選ばれることに繋がったと、栗山監督から聞いています。

-  随分、時間がかかったんですね。
今もそうですが、とても人気のある漫画なので、他の会社も映画化を望んでいて争奪戦が繰り広げられていました。念願が叶うまでには、プロデューサー陣の頑張りやいろいろなことがあり、紆余曲折の末、松竹が映画化することになりました。栗山さんは早くから映画化を望んでいたので、私が企画を耳にしてから、4年越しで念願が叶ったという感じだったんですよ。

- キャスティングについてはどう思われましたか。
直接、キャスティングに関わっていなかったのですが、西田敏行さん演じるハマちゃんは、どの会社でも候補に上がっていたそうです。漫画のイメージにぴったりだと誰もが思っていました。

息ピッタリのハマちゃんとみち子さん

一方で、スーさんは、三木のり平さんや植木等さんだったり、喜劇の大御所の名前が挙がっていたので「三國連太郎さんに決まった」と聞いたときは意表をつかれた感じで、正直言って「怖い!」が先に立ちました。日本映画史に残る名作に沢山出演してきた重厚な演技をされる役者さんで、それまで、コメディに出演されたことはなかったと思います。
「テレビドラマの〈赤いシリーズ〉で、山口百恵さんをイジメていたあの三國さんですか?」と栗山監督に何度も聞き返しました。私は百恵ちゃんのファンだったので!

重役会議でのスーさん

- 三國さんのコメディ映画への取り組みは如何でしたでしょうか。
いつも色々なプランを考えて撮影に臨まれていました。例えば、第1作の三國さんは、漫画の「スーさん」に、近づける為に、「つけ鼻」を特殊メイクでつけたいと仰っていました。それでは、現実の生活が舞台になっている作品なのに、鼻だけ浮き上がってしまいます!、とお話して、なんとか断念して頂き、眉毛を漫画に寄せて、ゲジゲジにする、ことで落ち着きました。


スーさんの立派な眉毛は、原作へのオマージュ?

- シリーズ化される予感はありましたか。
いや、まったく。一作で完結だと思ってスタッフは作っていて、「とにかく明るくて気軽に観られて、日本全国でウケる楽しい映画を作ろう!」と現場は動いていました。
主役の2人やみち子さんを演じた石田えりさん、脇を固める谷啓さん、中本賢さん、江戸家猫八さんといった脇の役者さんのアンサンブルもあって、とても良い雰囲気でした。
スタッフも、芝居心があって、ハマちゃんが借りる家の管理人をスチールキャメラマンが演じたり、釣り船のシーンのエキストラは、大船撮影所にあった「釣り部」の部員だったり、と遊び心も満載でした。松竹大船撮影所が作ってきた松竹喜劇の伝統が、この作品にとって良い作用をしていたと思います。

- 釣り船のシーンは、第1作目から登場していますね。
タイトル前の釣り船のシーンでは、鯛を釣り上げています。本来、お目出たい赤い鯛が登場するところですが、当時、昭和天皇の御病状が悪化されていたので、使用を控えて黒鯛を釣り上げているんです。

釣果を喜んでいるハマちゃん。

このシリーズでのロケ撮影をした場所は、今は無くなってしまったところが沢山あります。今回の釣り船のシーンもその1つで、今の八景島シーパラダイスが出来る前の堤防に船をつけて撮影しました。

- 出来上がった作品を御覧になっていかがでしたか。
栗山監督は、役者さんが自由に演じるアドリブを交えたセリフ回し、自分が楽しいと思う方向に流れていくことを止めずにいこう、と考えている方で、主演の二人が時として遊び、時として戦う演技を自由に取り入れていました。なので、完成した作品は、台本と丸っきり違いましたが!
皆が熱心に、楽しんで作ったことで楽しい映画ができたな、と思いました。

映画『釣りバカ日誌』台本。 すべてはここから始まった!

〈その2に続く〉

映画『釣りバカ日誌』シリーズ
商品 (DVD・DVD―BOX)
https://www.shochiku-home-enta.com/c/series-turibakanisshi

土曜だ!釣りバカ!
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