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【東京国際映画祭】「女性監督のパイオニア 田中絹代」トークイベントレポート

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11/1(月)、東京国際映画祭 日本映画クラシックス部門田中絹代監督特集に向けて、「女性監督のパイオニア 田中絹代」トークイベントが開催されました。

クリスチャン・ジュンヌ氏(カンヌ国際映画祭代表補補佐)、三島有紀子氏(映画監督)、斉藤綾子氏(明治学院大学教授/映画研究者)、冨田美香氏(国立映画アーカイブ主任研究員)によるトークイベントのレポートをお届けします!

第1部
ゲスト:クリスチャン・ジュンヌ氏(カンヌ国際映画祭代表補佐)
聞き手:市山尚三氏

・フランスでの評価と展開
今年7月に『月は上りぬ』が上映されたカンヌ国際映画祭で代表補佐を務めるクリスチャン・ジュンヌ氏は、
「田中絹代監督作品が上映された7月のカンヌ・クラシック部門、10月のリュミエール映画祭、どちらも大盛況だった。この成功を受けて、来年4月に田中絹代監督作品全6本の劇場上映がパリをはじめとしたフランス各地で決定している。」と、フランスでの評価と今後の展開についてお話なさいました。

・美しい色表現
今回東京国際映画祭で上映される4作品のうち、カラー作品は『流転の王妃』と『お吟さま』の2作品。
田中絹代監督作品の美しさについて
「色彩をただのデコレーションではなく、映画の言語として使っている。特に『お吟さま』では青の表現が非常に美しい」と評価しました。

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「なぜ今まで田中絹代監督作品が取り上げられてこなかったのか、非常に不思議に思う。映画史上でも重要な部分だと思うのでぜひとも取り上げてほしい。また、日本の観客も大きなスクリーンで観られるように上映を強く望む。」と語り、東京国際映画祭のプログラミングディレクター・市山尚三氏も
「日本での劇場公開も近日実現してほしい」と、賛同の意を示しました。

第2部
ゲスト:三島有紀子氏(映画監督)、斉藤綾子氏(明治学院大学教授/映画研究者)、冨田美香氏(国立映画アーカイブ主任研究員)
司会:市山尚三氏

・田中絹代だからできた繊細な表現
三島氏がご自身の経験と照らし合わせながら
「ディティールに丁寧にこだわった芝居が各作品、随所にみられる。繊細なところで関係性を表現する積み重ねによって、大きなメッセージを伝えられるお芝居になる」とお話。
これを受けて斉藤氏は、
「『お吟さま』では女性が愛を突き詰めていく姿が描かれるなど、どの作品でも女性のセクシュアリティーが繊細に描写されている。他の監督の作品で女優としては表現できなかったものを自分が監督になることで表現したいと思っていた可能性があるのではないか。」と指摘しました。

冨田氏は田中絹代が監督業を行っていた当時の時代背景とともに、
「大掛かりな時代劇を撮ることが難しくなっていた1960年代に『お吟さま』のような時代劇を撮ることができたのは、田中絹代がアグレッシブにテーマを追求し妥協しなかった成果である。」と評価。

三島氏は田中絹代と同様に女性監督のパイオニアであった坂根田鶴子の名前を挙げ、
「同じ時代に映画界に生き、映画を撮った2人の対照的な女性ということで個人的に興味がある。2人の生き方はその時代を象徴しているのではないか。」とトークイベントを締めくくりました。

 

今回のトークイベントの様子はアーカイブでもご視聴いただけますので、ぜひご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=My786-W_0Sc

田中絹代監督特集は11/2(火)からスタート
・田中絹代監督特集 上映スケジュール
11/2(火) 10:40~ 『月は上りぬ 4Kデジタル復元版
11/3(水・祝) 11:30~ 『お吟さま 4Kデジタルリマスター版
11/4(木) 10:50~ 『流転の王妃 4Kデジタル修復版
11/8(月) 10:20~ 『乳房よ永遠なれ 4Kデジタル復元版

・『お吟さま』
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『お吟さま』は、茶道の名匠千利休の娘お吟とキリシタン大名高山右近との悲恋を描いた今東光原作の同名小説の映画化作品。右近(仲代達矢)に思いを寄せつつも堺の豪商と結婚させられた上、秀吉の側女になることを強制されたお吟(有馬稲子)は、右近への愛のため死を選択します。豪華絢爛な桃山文化の中で権力に屈することなく生きた女性を、女優として活躍していた田中絹代ならではの耽美的でキメの細かい演出により美しく映し出した作品です。

今回ご登壇いただいた冨田さんがご所属の国立映画アーカイブでは田中絹代監督作品『女ばかりの夜』を上映予定。
・NFAJコレクション 2021秋
https://www.nfaj.go.jp/exhibition/nfaj-autumn202110/

ぜひこの機会に、美しく蘇った田中絹代監督作品をスクリーンでご覧ください。