連載「女ひとり、名画座行ってきます。 」
【フィルムセンターの巻/前編】
カテゴリ:連載「女ひとり、名画座行ってきます。」
週末ごとに、名画座に通う。
レンタルビデオではなく、動画配信でもなく、シネコンでもなく、「名画座」。そんな女子が周りにいたらちょっとかっこいいし、きっとタダモノではない。そして願わくば、自分もそんな女子になりたい!!
この度、そんなフラチな理由で名画座めぐりを敢行することに決めました。
改めて「名画座とは」をご説明すると、主に旧作映画を上映する映画館を指し、劇場ごとに趣向を凝らした特集もやっています。
「マニアの人向けなのかしらん」
「そもそもチケットの買い方もよくわからない…」
そんな「?」が先立って名画座に踏み出せなかった貴女。私と一緒にゆる~く名画座めぐりをはじめてみませんか。名画座スタッフさんオススメの近隣スポットもご紹介しますよ!
日本唯一!“美術館の名画座”へ
名画座めぐりを宣言したにもかかわらず、右も左もわからない私を見かねた松竹のFさんが、第1回にふさわしい名画座をおすすめしてくれました。
どーん!
フィルムセンターこと、「東京国立近代美術館フィルムセンター」であります!
場所は京橋駅&宝町駅から徒歩1分で、東京駅、銀座駅からもアスセス可能という超好立地。そして映画&名画座シロウトの私に主任研究員の冨田美香さんがまず教えてくれたのが、「フィルムセンターは美術館である」という衝撃の事実でした。
「うちは国立の美術館の収蔵品として、フィルムの収集・保存・復元・公開を行っています。そのため、プロの目によって入念なチェックを経た、最良の状態で映画をご覧いただくことができるんですよ。フィルムの上映にも細心の注意を払っているので、傷もほとんどありません」(冨田さん/以下同氏)
フィルムセンターさんにとって、映画フィルムは美術品だったんですね!しかし、映画ツウでなくてもフィルムの良さというのは実感できるものでしょうか…。正直、映画を観るときにあんまり画質を気にしたことがなかったもので…。
空気感まで味わえる!至高のフィルム体験
「今はデジタルデータでの上映やブルーレイ・DVDなどで映画を観る機会が多いかと思いますが、それらと最良の状態で焼いたフィルムとは画の密度が全然違うんですよ。ハリウッドではデジタル制作全盛の今でも、草原や牧場といった広大なシーンはフィルムで撮影をしていることが多いんです。
フィルムセンターで白黒映画を観る時は、ぜひ“黒”に着目してみてください。一口に“黒色”といっても千差万別で、締まった“黒”やグラデーションの美しさがわかると思いますよ。あと漠然とした話になってしまいますが、いちばんフィルムの威力を実感できるのは“空気感”なんです。ひとコマひとコマが粒子で成り立っているのがフィルムなんですが、粒子の連続体がスクリーンに投影されると、画面にググッと奥行きが出るんです。なので、キーンとした寒い冬の雰囲気なんかが、空気の層みたいに感じられるんですよ」
まるでアトラクション!? お客さんとの一体感もスゴい
そ、それは俄然観てみたいです!最良の状態のフィルムで映画を観るって、実はものすごいライブ感に溢れた行為なのかもしれませんね。
「そうなんですよ!ライブ感といえばフィルムセンターのもうひとつのユニークな点が、スクリーンとお客さんとの一体感。普通の映画館では静かに映画を観られる方が多いと思いますが、うちは大変映画がお好きないろんなお客さまがいらっしゃって、手を叩いて大笑いしたり、時に怒号が飛んだり…。映画をじっくり味わうとともに、ユニークな鑑賞体験そのものも楽しんでいただけたらと。同じお客さんと観るのはその1回こっきり。フィルムセンターではその“1回性”を楽しんでいただきたいですね」
フィルムセンターは作品を鑑賞するだけでなく、劇場の雰囲気も含めた全部が“エンタメ体験”なんですね!
続く後編ではフィルムセンターのいろんな楽しみ方と、スタッフの皆さんがオススメする近隣スポットを紹介します!
東京都中央区京橋 3-7-6
03-5777-8600(ハローダイヤル)
休館日:月曜日と年末年始。上映準備・展示替えの期間。図書室は日曜日閉室
(取材・文/小泉なつみ)