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第76回カンヌ国際映画祭『長屋紳士録 4Kデジタル修復版』ワールドプレミア上映レポート

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第76回カンヌ国際映画祭クラシック部門(Cannes Classics)にて、小津安二郎監督作品『長屋紳士録 4Kデジタル修復版』(1947年製作、英題:Record of a Tenement Gentleman 4K Digitally Remastered Version)ワールドプレミア上映が、5月18日(木)17:30~(※現地時間)行われました。

本年のカンヌ国際映画祭クラシック部門(Cannes Classics)に選出された作品は、『白い恐怖』(1945年、アルフレッド・ヒッチコック)や『軽蔑』(1963年、ジャン=リュック・ゴダール)など。さらに小津安二郎生誕120年を記念した“CÉLÉBRATION D’OZU (1903-1963)” として、『長屋紳士録』(1947年、松竹)、『宗方姉妹』(1950年、東宝)の4Kデジタル修復版がクラシック部門に選出。小津安二郎監督作品のデジタル修復版は、2013年のベルリン国際映画祭の『東京物語』(2K)から世界三大映画祭クラシック部門へ10回目の出品。小津作品が同時選出されたのは史上初となります。

また、現地では修復にあわせて新たに作成した海外向けポスターを披露。長屋の和やかな雰囲気を表現したデザインは現地でも好評を博している中、ご来場いただいたヴィム・ヴェンダース監督からポスターにサインをいただきました。”For the next 60 years of OZU”の文字と、少年の肩に翼のスケッチを描いてくださいました。

ポスターにサインをするヴィム・ヴェンダース監督


デジタル修復された『長屋紳士録』は世界中の映画関係者から高い注目を集めており、チケットは即完売に。上映にはヴィム・ヴェンダース監督をはじめ、大変多くのお客様が劇場にお越しくださいました。上映前には松竹株式会社メディア事業部海外版権室長の小山芽里が登壇し、お客様を前に作品紹介を行いました。

<上映前スピーチ概要(松竹株式会社 メディア事業部 海外版権室長 小山芽里)>
本年は小津安二郎監督の生誕120年、没後60年にあたる節目の年です。小津安二郎は60歳の誕生日にその生涯を閉じました。監督なき後、彼の作品たちはさらに60年生き続けたことになります。60年は干支の一巡りであり、日本文化では生まれ変わりを意味しています。本年は小津安二郎と彼の作品たちにとって、非常に特別で記念すべき節目の年だと感じています。

『長屋紳士録』は、小津安二郎が戦争から帰還して最初に製作した映画です。捕虜として過ごしたシンガポールから帰国した小津安二郎は、1947年に2週間で脚本を書き上げ、3月に撮影を開始。作品は5月に公開されました。 後期の小津作品では、戦争は台詞の中で語られるだけで視覚的に表現されることはありませんでしたが、本作では公園に集う孤児たちや焼け野原の東京の風景など、戦争が落とした影が多々見受けられます。しかしながら決して暗く憂鬱なテーマを扱っている訳ではなく、 他の作品同様にユーモアに満ち溢れ、「人と人との繋がり」や「家族になるとは」といった根本的なテーマを描いています。

本作は戦前作品のキャストやスタイルを維持しながら、戦後の日本の生活を描き新しい時代をスタートさせた小津作品として、生誕120年での上映に相応しい映画だと思っています。


会場に熱気があふれる中、上映がスタート。上映後の会場は大きな拍手に包まれました。映画界を代表する監督・小津安二郎を再顕彰するにあたり、最高のワールドプレミア上映となりました。

<観客コメント>

●修復作品や小津作品に興味を持つようになって今日観に来たのですが、作品を通して随所に散らばるユーモアや、誰にでも共通する普遍的なテーマもとても良かった。素晴らしい作品でした。(ドイツ人、20代男性)
●小津作品は初めて観ました。最初は良くなかった二人の関係性が少しずつ変化していき、最後には愛すら感じられるところがとても良かった。(フランス人、地元高校生)
●修復作品を初めて観たが、大変大変感銘を受けた。特に撮影のクオリティと修復のクオリティが素晴らしいと思った。(ポーランド人、30代男性)
●こんなに古い作品を観たのは初めてで、修復作品自体を観たのも初めてだが、クリアーな音声と画質のクオリティの高さに驚かされた。上映を観れて、素晴らしい経験になりました。(中国人、20代女性)


海外向けポスター

『長屋紳士録 4Kデジタル修復版』/Record of a Tenement Gentleman 4K Digitally Remastered Version
監督:小津安二郎
脚本:池田忠雄、小津安二郎
出演:飯田蝶子、青木放屁、小澤榮太郎、吉川満子、河村黎吉、三村秀子、笠智衆、坂本武
製作年:1947年

<4Kデジタル修復について>
小津安二郎監督作品『長屋紳士録』の 35mm デュープネガをフル 4K(4K解像度( 4096× 3112 )スキャン、4 K デジタル修復、4KDCP )で修復。画像修復は、近森眞史キャメラマンに監修いただき、イマジカにて作業。音声修復は、35mm デュープネガから 96kHz24bit でデジタイズし、電源、キャメラ、光学編集、ネガのキズや劣化等、様々な要因によるノイズ、レベルオーバーによる歪みを、原因に立ち返って類推し、清水和法さん監修のもと松竹映像センターにて修復。小津安二郎監督の製作意図を尊重して修復する事を主眼に作業しております。

<これまでにデジタル修復された小津作品ワールドプレミア上映>


小津安二郎公式WEBサイトhttps://www.cinemaclassics.jp/ozu/