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小津安二郎生誕120年 連載コラム「わたしのOZU」第4回
「はじめて観た小津作品」―『お早よう』 漫画家 エイドリアン・トミネ

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小津安二郎生誕120年を記念した連載コラム「わたしのOZU」。
各界でご活躍されている著名人の方々にお好きな小津作品を1本選んでいただき、お好みのテーマを切り口とした作品紹介コメントをいただく企画です。

第4回は、漫画家 エイドリアン・トミネさんの作品紹介です。

エイドリアン・トミネ

1974年、カリフォルニア州サクラメント生まれの漫画家。代表作に『キリング・アンド・ダイング』、『長距離漫画家の孤独』、『サマーブロンド』、The New York Timesが選ぶ「今年の100冊」に選出された『Shortcomings』(原題)がある。1999年以降、彼のコミックやイラストは雑誌THE NEWYORKERに度々掲載されている。彼の作品の一つである『パリ13区』は、2021年に待望の映画化。『Shortcomings』の長編映画も2023年に公開される予定。現在は妻と娘たちとともにニューヨーク市ブルックリン在住。


「はじめて観た小津作品」―『お早よう』

 私が初めて観た小津映画は『お早よう』です。10代の頃に母からVHSのコピーをもらったのですが、恥ずかしながら鑑賞するまで何ヶ月も本棚に置いたままでした。小津監督の名前は聞いたことがありましたが、彼の映画が敬愛され、学術的な研究対象になっていることもあり、知的かつ古風でテンポも遅い作品はきっと私には理解できないだろうと考えていました。(ごめんなさい。当時の私は田舎に住んでいて、幼い頃に好きだったスター・ウォーズやスーパーヒーロー・コミックから卒業しようとしている最中だったのです。)

 『お早よう』を観たことがある方なら、私がいかに間違っていたかわかると思います。実際に作品を観たときは、感情が驚きと喜びでいっぱいになりました。作品内で登場する軽妙なユーモアが私の先入観を払拭したのですが、それ以上にこの作品の信じられないほどリアルな雰囲気と感情の動きが私をあっという間に夢中にさせ、「こんな作品は観たことがない」ことに気づきました。当時の私は生活の中の些細な出来事にドラマを見出すような「実生活」を描く文学や漫画に興味を持ち始めていたのですが、小津作品はその点において傑作だと感じました。

 それ以来、小津監督はあらゆるジャンルの中で最も好きなアーティストの一人であり、私の作品に大きな影響を与えた人物と言っても過言ではないです。彼の映画を研究し、その内容や形式から多くのことを吸収しようと努めてきました。誰も気づかないと思いますが、私の漫画や文章、描き下ろした雑誌『ザ・ニューヨーカー』の表紙イラストさえも、小津監督から学んだことが活きているのです。

 実は、私のキャリアで最も誇れる出来事の中の2つが小津監督に関係しています。2010年にクライテリオン・コレクションから、小津監督の初期作品2本を収録したDVDボックスセットのイラストを依頼されました。私は自分の本や作品を家に飾ることはしませんが、このボックスだけは例外です。アトリエの棚に置いてあるのですが、その存在そのものが今でも私の誇りであり、信じられない気持ちです。

 そして昨年、『Shortcomings』という脚本の最終稿を書いていたとき、主人公が好きな映画、特に小津の『お早よう』を観ているという、細かな設定を盛り込みました。この設定はプロデューサーに見つかり、修正させられることになるだろうと思っていました。しかし驚いたことに、プロデューサーが権利元から快く許可をいただいたので、私の初プロデュース作品に『お早よう』の素晴らしい一コマが登場することになりました。数週間前にサンダンス国際映画祭で完成した映画を観たのですが、尾根を歩きながらおならをする小学生たちを見て、私は泣きそうになりました。

エイドリアン・トミネ


『お早よう』
監督:小津安二郎
脚本:野田高梧 小津安二郎
出演:佐田啓二 久我美子 笠智衆 三宅邦子 杉村春子 設楽幸嗣 島津雅彦 泉京子 高橋とよ 沢村貞子 東野英治郎
製作:1959年
作品詳細:https://www.cinemaclassics.jp/ozu/movie/2832/
配信:https://lnk.to/Ohayou
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エイドリアン・トミネ著『Shortcomings』待望の映画化!

『Shortcomings』
Photo: Jon Pack

The New York Timesが選ぶ「今年の100冊」に選出された『Shortcomings』が、アジア系アメリカ人俳優ランドール・パークの長編監督デビュー作として待望の映画化。脚本は原作者のエイドリアン・トミネが務める。ベン・タナカ(ジャスティン・H・ミン)、ミコ・ハヤシ(アリー・マキ)、アリス・キム(シェリー・コーラ)のカリフォルニア州ベイエリア出身の若者3人組が、理想のつながりを求めて全米を旅しながら、さまざまな人間関係を築いていく姿を描いた作品。


小津安二郎公式WEBサイトhttps://www.cinemaclassics.jp/ozu/