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小津安二郎生誕120年 連載コラム「わたしのOZU」第3回
「いまだから観たい小津作品」―『東京暮色』 映画監督・廣木隆一

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小津安二郎生誕120年を記念した連載コラム「わたしのOZU」。
各界でご活躍されている著名人の方々にお好きな小津作品を1本選んでいただき、お好みのテーマを切り口とした作品紹介コメントをいただく企画です。

第三回は、映画監督・廣木隆一さんの作品紹介です。

廣木隆一 監督

1954年1月1日生まれ、福島県出身。1982年、映画監督デビュー。『800 TWO LAP RUNNERS』(94)で、文化庁優秀映画賞ほかを受賞。『ヴァイブレータ』(03)では、第25回ヨコハマ映画祭をはじめ、国内外40以上の映画祭で数々の賞を獲得する。2017年には、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』にて、第41回日本アカデミー賞優秀監督賞受賞。その他の監督作品に、『余命1ヶ月の花嫁』(09)、『100回泣くこと』(13)、『ストロボ・エッジ』(15)、『夏美のホタル』(16)、『オオカミ少女と黒王子』(16)、『彼女の人生は間違いじゃない』(17)など。


「いまだから観たい小津作品」―『東京暮色』

 小津映画が家族を描いた作品の中で一番悲しい映画じゃないかと思う。小津映画を代表する女優、原節子と有馬稲子の共演作でもありながら寂しげな家族の話である。家族を描くのは映画の基本であるのではないかと常々思っている。姉妹の話が対照的に描かれ、優等生的タイプの原節子と悩みを抱えた有馬稲子が対照的に描かれていく中で、大人達の無責任さが見え隠れしてくる。なんと言っても有馬稲子がショートヘアーで、モダンで可愛らしいのが魅力であり、孤独な少女を際立たしている。それは今の時代にも通じているように見える。

 また、見合いで結婚した姉にも深い悲しみが浮かび上がって来る。昭和の風景が所々に差し込まれるのだが、その中の夕景は今の時代でも変わらない色あいをしていたのだろうし、朧げで儚い色だったのだろう。小津映画ではどんな色に見えていたのだろうか。今にも通じる家族の中で姉妹を持つ父親の悩みなど、夕暮れのような鮮やかなオレンジ色に重ねて描いているように思えた。僕自身もいつか、小津さんの映画のように静かで深い映画が撮りたいと常々思う。

廣木 隆一



『東京暮色』

監督:小津安二郎
脚本:野田高梧 小津安二郎
出演:原節子 有馬稲子 笠智衆 山田五十鈴
製作:1957年
作品詳細:https://www.cinemaclassics.jp/ozu/movie/2840/
配信:https://lnk.to/T-Boshoku
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廣木隆一 監督作品『月の満ち欠け』Blu-ray&DVDが6月21日(水)発売決定!

©2022 映画「月の満ち欠け」製作委員会

廣木隆一 監督作品『月の満ち欠け』Blu-ray&DVDが6月21日(水)発売決定!
日本アカデミー賞作品賞他9部門受賞の傑作を、是非ご家庭でお楽しみください。

■ストーリー
仕事も家庭も順調だった小山内堅(大泉洋)の日常は、愛する妻・梢(柴咲コウ)と娘・瑠璃のふたりを不慮の事故で同時に失ったことで一変。深い悲しみに沈む小山内のもとに、三角哲彦と名乗る男(目黒蓮)が訪ねてくる。事故に遭った日、小山内の娘が面識のないはずの自分に会いに来ようとしていたこと、そして彼女は、かつて自分が狂おしいほどに愛した“瑠璃”という女性(有村架純)の生まれ変わりだったのではないか、と告げる。
【愛し合っていた一組の夫婦】と、【許されざる恋に落ちた恋人たち】。
全く関係がないように思われたふたつの物語が、数十年の時を経てつながっていく。
それは「生まれ変わっても、あなたに逢いたい」という強い願いが起こした、あまりにも切なすぎる愛の奇跡だった——。

アミューズソフトhttps://www.amuse-s-e.co.jp/title/tsuki-michikake/


小津安二郎公式WEBサイトhttps://www.cinemaclassics.jp/ozu/