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連載「女ひとり、「釣りバカ」完走してきます【スペシャル編】」

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 「寅さん」とセットではない、初の1本立て興行として公開されたシリーズ通算7本目。「スペシャル」というだけあって、90年代アイコンの加勢大周を筆頭に、富田靖子、ケーシー高峰、河原さぶ、西村晃と心躍る豪華なキャストが勢揃い。そして極めつけは、なんといっても田中邦衛と清川虹子であります。

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 しかもこのふたりが母子として登場し、土手で太極拳をしているシーンが見ている側にとってのファーストコンタクトになるものだから、思わず画面を二度見してしまいました。
 さらにご本人よりダミー(モノマネ)を見ている回数の方が多い自分は、リアル邦衛に異常コーフン。ご尊顔を眺めながら、「まじでモノマネそっくり…」とつぶやいていました。
 あと実はKUNIE、洋服の着こなしが抜群です。自転車屋の作業着としてアディダスのジャージやつなぎを着てつばの反り返ったキャップをかぶった様は、ラップしたりスケボーに乗ったりしていてもまったく違和感のない今っぽさがありました。

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 そんな通算7本目は「スペシャル」であると同時に、谷啓扮する人気キャラ、佐々木課長を主役にした「スピンオフ」としても見られます。
 これまで営業三課のオフィスでしか見られなかった佐々木課長ですが、今回、老舗宝飾店の御曹司(加勢大周)と愛娘・志野(富田靖子)の縁談話が持ち上がったことから、佐々木家のプライベートが初めて明かされることに。
 そして佐々木課長の娘の結婚話とともに描かれるのが、みち子さんとスーさんの浮気疑惑から勃発する浜崎家の夫婦危機。そう、特別編に通底するテーマは「結婚・夫婦」なのであります。

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 降って湧いた玉の輿のチャンスに心が揺れる佐々木家の長女・志野でしたが、結婚がにわかに現実味を帯びたことで浮かび上がってきたのは、近所に住む幼馴染への想いでした。結局志野は、お金持ちでグッドルッキングの加勢大周より、見た目も肩書も平凡ながら、互いに好きなブルーハーツ(!)を一緒に楽しめる相手を選びます。
 一方、一瞬でも愛するみち子さんを疑ってしまったことに自責の念を覚えるハマちゃんでしたが、それは妻への深い愛情の証左であり、彼女へのリスペクトを欠かさない姿勢にほかなりません。そしてハマちゃんの愛を受け止め、いつだって彼の好きなこと(=釣り)をサポートするみち子さんの姿から、理想の夫婦像が提示されるのでありました。

 そんな浜崎家と志野の姿から結婚・夫婦における“キモ”を学べると同時に、シリーズ初となる森﨑東監督の演出も必見で、シリアスあり、サスペンスありの重厚な1本になっております。異色で傑作なスペシャル編、ぜひご堪能ください!


文 小泉なつみ

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