連載「女ひとり、「釣りバカ」完走してきます【シリーズ6本目】」
93年12月25日に公開された「6」の舞台は、宮城県釜石市。
美しい釜石湾や近くの商店街が映し出されるたび、後に起きる大震災のことが頭をよぎって胸が締め付けられます。この地でアイナメ釣りを楽しんだハマちゃんスーさんも、未来にそんなことが待ち受けているとはよもや想像できなかったことでしょう。
さて、そんな在りし日の光景に様々な思いをめぐらせながら見た「6」も、紛いなき傑作でありました。
そもそも『釣りバカ』の醍醐味といえば、大企業の社長であるスーさんと万年平社員のハマちゃんという社会的地位に雲泥の差があるふたりが漁場に出た途端、上下関係が逆転するところ。
プライベートではハマちゃんが師匠となり、普段は雲の上の存在であるスーさんを弟子として扱うという、サラリーマンなら間違いなく溜飲が下がる設定になっているわけです(でも互いの立場を行使していじわるしたりしないところがふたりの素敵なところなんですが)。
そしておもしろいのが社会的な地位があり、部下を何百人も従え、たんまりと財産もあるスーさんより、肩書もなく、安月給の釣りバカであるハマちゃんの方が明らかに幸せに満ちているという点。
特に今回は奥さんが海外旅行で家をあけてしまっていることもあってスーさんはいつも以上に寂し気で、なにかと浜崎家に泊まりたがります。
さらに会社では使えない重役たちに小言を言って疎ましがられ、味方などナッシング。
地位も名誉も財産もある大人の男性はこれほどまでにひとりぼっちなのか……といたたまれない気持ちになりましたが、もしかすると世の中の“えらい人”はみんなスーさんのように誰とも相容れることができないばかりか、そんなことを気にしている素振りすら見せることができず、壮絶な孤独を抱えながら生きているのかもしれません。
そんなことを考えながら見ていたら、ハマちゃんの前で駄々をこね、おどけ、怒り、笑う奔放なスーさんがいじらしくてたまらなくなったのであります。
さらに「6」では笹野高史演じるスーさんの運転手が初めて運転席でなく後部座席に座ったり、ハマちゃんがイラン人に化けたり、暴力的にデカいパソコンに映し出されるスーさんのスケジュール表がWordArt風だったり、ブレイク前の原田泰造&ホリケンが出ていたりと、おもしろポイント満載なので要チェックであります!
文 小泉なつみ
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「女ひとり、「釣りバカ」完走してきます」
BSジャパンにて毎週土曜日夕方6時30分より
「土曜だ!釣りバカ!」放送中!
▼詳細
http://www.bs-j.co.jp/cinema/
見逃した方はこちらからもどうぞ
「釣りバカ日誌」公式サイト
▼「釣りバカ日誌6」作品情報
https://www.tsuribaka-movie.jp/movie/6/