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連載「女ひとり、「釣りバカ」完走してきます【シリーズ3本目】」

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 ネックレスをじゃらつかせ、EXILEのメンバーが被っていそうなキャップでキメたスーさんに心がざわめいた「3」のオープニング。ワルメン風のスーさんはそのまま船上でロマネコンティを開け、いつも以上にワイルドでギラついています。
 「3」の公開は90年なので、バブル経済最後の輝きをスーさんが捨て鉢に体現しているのかもしれません。

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 そして同年に大ヒットした『ちびまる子ちゃん』のまる子役TARAKOも営業三課のOL役で登場し、あの頃感が横溢していました。そうそう、デパートの屋上(これも90年代っぽい)で買ったコーヒー代「206円」をめぐってハマちゃんとスーさんが揉めるシーンもありましたが、3%の消費税が導入されたばかりの頃だったんですねえ。

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 そんな90年代の幕開けを飾った「3」では、マドンナ・雪子役で五月みどりが登場。西伊豆を舞台にスーさんの隠し子疑惑と浜崎家の子作り問題が並行して描かれていきます。
 こうしたメインとなる事件やロマンスに加え、鈴木建設の重役たちの(愛らしい)ポンコツっぷり、そして谷啓演じる佐々木課長&戸川純扮する不思議系OLが織りなす営業三課の脱力的な日常が脇を固め、雰囲気はゆるいのに密度・ギャグともに隙のない作りになっているのが『釣りバカ』の魅力。「3」はそんな原型ができてきたあたりかなと思われます。

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 当時は『男はつらいよ』との2本立てだったため尺も一定して90分前後と、決まった“型”のなかでシリーズが作られていたわけですが、2018年の今、『釣りバカ』のように安心して身を委ねられる、“お約束”を楽しむような国民的映画はなかなか見当たりません。しかもなにかと名作として語られるのは寅さんの方で、『釣りバカ』は軽んじられてきた感が否めず。

 でもですね、でもですね。

 このコラムを松竹さんから発注してもらっているからではなく、私は断然、『釣りバカ』派だなと改めて感じた次第。
物心ついたときが90年代だった自分はどう考えてもフーテンの寅さんよりバブルが弾けてしまった後の鈴木建設やシリーズを貫く「24時間戦えますか」な社畜精神、そしてそんなすべてのサラリーマンたちの理想郷として描かれる浜崎家の方が断然、自分に寄り添ってくれていると感じるのであります。
 そんなわけで、今の30、40代にこそ『釣りバカ』を一緒に見て欲しいなと感じた「3」でありました。


文 小泉なつみ

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http://www.bs-j.co.jp/cinema/

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「釣りバカ日誌」公式サイト
▼「釣りバカ日誌3」作品情報
https://www.tsuribaka-movie.jp/movie/3/