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連載「女ひとり、「釣りバカ」完走してきます【シリーズ1本目】」

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 伊豆の旅館「ハトヤ」に行くツアーの道中で。遠足の行き帰りで。83年生まれの自分にとって「釣りバカ」とは、観光バスの中で見るものでした(あの頃のバスには「寅さん」と「釣りバカ」のVHSがあった)。だから記憶の中のハマちゃんとスーさんはいつも他人の後頭部越しで、遠くの四角い箱の中で揺れていました。
 というわけで、これ以上ないほど受け身なスタイルで「釣りバカ」と触れ合ってきたわけですが、今年は第1作の公開から30年ということで、改めて振動なく「釣りバカ」全22本と向き合う機会をいただきました。

 88年に公開された記念すべき1本目は、香川県の離島に暮らしていたハマちゃんが、勤務先である鈴木建設の東京本社に異動となったことからはじまります。
 ハマちゃん演じる西田敏行さんは太っているけどやっぱり痩せているし、スーさん役の三國連太郎さんはつけ眉毛のボリュームが凄いことになっていて、初期ならではの味わいが楽しいのですが、それよりなにより驚愕したのが、本作のサラリーマン川柳的アイロニー度の高さでした。

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 実際はデータの入力ミスが原因ですが、東京本社への配属はサラリーマンのハマちゃんにとっては栄転。しかし釣り命の彼には、単なる迷惑でしかない。


「退屈はしとらんのです。ただ空気が足りないのです」

 東京のオフィスであくびのとまらないハマちゃんがつぶやくこんな言葉に、ぐっと胸を掴まれます。しかしなんで会社の中ってあんなに灰色で殺伐としていて息苦しいんでしょうね。

 ハマちゃんは直属の上司である佐々木課長をナチュラルにコケにし、遅刻ばかりで同僚とくっちゃべってばかり。でもそんな彼をすぐにみんな好きになってしまいます。
 それは上司の顔色を伺うだけで自分の意見はなく、肩書だけで人を判断するような社員のなか、唯一、損得で動かない男がハマちゃんだからなのです。
そんなハマちゃんを見ていると、「ライフワークバランス」とか「働き方改革」とかがちゃんちゃらおかしく思えてきて、「人生、どこまで好きなことに貪欲になれるかだな」と、ちょっと大胆に生きてみたくなりました。でも自分レベルではせいぜい〆切を一日遅らせてもらって、近所のアロママッサージを受けるくらいが関の山です。

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 そして、みち子さんのソバージュ(ハマちゃんの奥さん)や社内のデスクでタバコをふかす景色などから嗅ぎ取れる88年の香りも思う存分吸い込んでくださいね!


文 小泉なつみ

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女ひとり、映画館に行ってきます


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BSジャパンにて毎週土曜日夕方6時30分より「土曜だ!釣りバカ!」放送中!
▼詳細
http://www.bs-j.co.jp/cinema/

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▼作品情報
https://www.tsuribaka-movie.jp/movie/1/