連載「女ひとり、名画座行ってきます。」
【新文芸坐の巻/前編】
カテゴリ:連載「女ひとり、名画座行ってきます。」
映画の価値が倍になる名画座!?
練馬に実家がある私にとって、池袋はもっとも身近な都会でありました。実家暮らしをしていた学生時代は西武池袋線ユーザーかつ予備校もあったりした関係で、もっぱら東口をウロウロしたものであります。
そんな池袋にある名画座といえば、「新文芸坐」ですよね!
97年まで「文芸坐」の名前で営業していた当館は、00年に「新文芸坐」として再スタート。文芸坐時代を含めると60年以上の歴史があるそう!
「私は大分県出身なんですが、上京してすぐ文芸坐へ通うようになりました。特に、文芸坐に併設されていた邦画専門劇場・文芸坐地下劇場の方へよく行きましたね。
当時からとても有名な映画館で、ここで上映されていた監督や俳優の特集は大きな注目を浴びていました。
たとえ他の館で同じ映画を上映していたとしても、文芸坐でかかるとより一層その作品の価値が上がるというということがあったのでは、と手前味噌ですが、思います」(矢田庸一郎支配人/以降「」内同氏)
続けることが、映画ユーザーを増やす秘訣
劇場に対する信頼感がすごいんですね。しかし、そんな強固なブランド力はどうやって培われたんでしょうか。
「そうですね……(熟考)。“やり続ける”ってことが一番の肝なような気がします。たとえば4月22日まで上映中の『気になる日本映画達<アイツラ>』特集は、かれこれ20年近く続けている企画。
これは直近1年間に上映された日本映画の中から注目作をピックアップし、まとめて特集して見せるという名物特集なんですが、去年の邦画といえば、『シン・ゴジラ』や『君の名は。』のヒットが記憶に新しいですよね。でも、そういったメジャー作品以外にもおもしろい日本映画はたくさんあります。低予算で、必ずしもヒットしたとはいえない映画――往々にしてそんな作品から若手作家のキャリアはスタートする。そんな気鋭の映画作家に光をあて、多くのお客さんに彼らの作品に触れてもらう機会を作れればと思い、はじめたんです。
そうして特集をやり続けてきた結果、『20年前に文芸坐で出会った若手監督の作品に刺激を受け、自分で映画を作るようになりました』なんていうお話をお客様からお聞きしたことがあります。大変光栄なことです。継続することが大切なんですね」
上映本数は年間700本
お客さんも作り手も、新文芸坐で育っている感じがします!
「実際、名画座は“映画の学校”って言われているんですよ。その所以は、安い料金でいっぱい映画が観られるから。実は新文芸坐として00年に再オープンした時にポリシーとして掲げた思いも、これとまったく同じでして。
いま新文芸坐では年間700本ものタイトルを上映しています。1日2本ペースというものすごい数ですが、これもひとえに、新旧、洋邦、新人・大御所問わず世界中のさまざまな作品に触れてほしいという思いから。いろんな映画を名画座で安くたくさん観てその面白さに触れ、ファンになってほしいんです」
矢田さんの映画への熱い思いと新文芸坐の凄さを改めて感じた前編に続き、後編の次回は、5月の目玉特集やあの名物(?)キャラについて迫ります!
■新文芸坐
東京都豊島区東池袋1-43-5 マルハン池袋ビル3F
03-3971-9422
(取材・文/小泉なつみ)