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第68 回ベルリン国際映画祭 クラシック部門
小津安二郎監督作品『東京暮色』 4Kデジタル修復版ワールドプレミア上映レポート

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 この度、第68回ベルリン国際映画祭(2月15日~25日)クラシック部門にて小津安二郎監督作品『東京暮色』(1957年、英題:TokyoTwilight)の上映が2月17日19時(現地時間)に行われました。

 本年のベルリン国際映画祭クラシック部門(BerlinaleClassics)は、「DasalteGesetz」(1923年、E・A.・デュポン)、「私の20世紀」(1989年、イルディコ・エンエデイ)、「未知への飛行」(1964年、シドニー・ルメット)「HeChayimAl-PiAgfa」(1992年、アッシ・ダヤン)、「ベルリン・天使の詩」(1987年、ヴィム・ヴェンダース)、「鶴は翔んでゆく」(1957年、ミハイル・カラトーゾフ)、「東京暮色」(1957年、小津安二郎)の7作品が選出されました。

 上映会場のCinemxX8は満席となり入場できない方もでるほどになりました。上映後は、観客から拍手がおき、盛況のうちに上映を終えました。

 本日は、現地からのレポートをお送りいたします!

東京暮色

■Wim Wenders(ヴィム・ヴェンダース)監督

(映画祭ディレクターの紹介の言葉をうけて)“称賛”では不十分かもしれません。私はいつも言っているように、小津安二郎は私の師匠です。偶然にも、昨夜、「ベルリン・天使の詩」4Kデジタル修復版の上映がありました。ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、この映画を私は、私の芸術上の守護神(天使)の一人、小津安二郎に捧げています。

「東京暮色」は、私がとても好きな作品です。理由はいくつかあります。小津作品最後の白黒映画で、白黒映画の真の傑作だということ。そして、非常に“フィルムノワール”な点、そして面白いことに、当時のフランスの哲学である実存主義につながっています。小津の中でもユニークな作品で、この後、カラー作品を小津は6本作ります。この小津最後の白黒映画のキャメラマン、厚田雄春さんは、助手からキャメラマンまで、生涯をかけて小津監督とともに仕事をした人です。私は、1983年、東京で彼をインタビューする特権を得ました。(「東京画」1985年、ヴィム・ヴェンダース)。その最後で彼は、小津監督にあまりにも尽くしたので、小津監督亡き後、他の監督のキャメラマンとして努力したが、難しいと悟り、しばらくして引退したと言いました。それを話しながら、厚田さんは涙を流し、通訳も泣き、通訳してもらった私も泣いて、私のキャメラマンだけが、何が起こったのかわからず撮影を続けていました。

厚田さんのインタビューの後、同じ日に、信じられないことですが、東京で、私の良き友人、大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」のプレミアに招待されました。プロデューサーも私の友人、ジェレミー・トーマスでした。厚田さんのインタビューに感極まってまま参加したのですが、私は、ある男性の2列後ろに座っていました。その時は、私は今も気が小さいのですが、挨拶はしませんでしたが、その男性が今晩ここに来ています。私のように小津監督を深く尊敬している、今回ベルリン映画祭で審査員として来られている、坂本龍一さんです。

 

東京暮色 ■坂本龍一氏

(ヴェンダース監督に)スピーチの前に私を泣かせましたね。小津はおそらく、私が一番好きな日本の映画監督です。大島さんごめんなさい!(と天井を見る)私は小津作品が大

好きです。昨年のヴェネチア(国際映画祭)でも話しましたが、このエピソードが好きなので、ベルリンみなさんにもお聞きいただきたいと思います。

ロンドンにいた時、日本の偉大な作曲家で私が非常に敬愛する武満徹さんと小さなカフェで話をしました。武満さんは小津作品を称賛していることで知られていて、映画音楽の偉大な作曲家でもあります。私たちは小津作品についてとても熱く語りました。大好きな小津作品について、細部に渡って話をしましたが、最後に音楽の話題になり、二人とも好きになれないと、いうことになりました。その時は、二人とも、映画はほぼ完ぺきなのに、音楽が伝統にとらわれすぎていると意見が完全に一致しました。そこで、小津作品の音楽をすべてもういちど二人で一緒に作曲しようと企画しました。残念ながら、それからしばらくして、武満さんは亡くなり、実現しませんでした。しかし、現在、私はそれで良かったと思っています。考えが全く変わったのです。小津作品の音楽は緻密に計算され、意識的に伝統に沿ったようにできているのだと思います。数年前に山田洋次監督と仕事をしました。山田監督は、おそらく、1950年代、60年代の松竹映画黄金期を知る最後の映画監督です。その黄金期をたたえて、小津作品の伝統に沿った音楽を山田監督の映画で試みました。(笑)

ヴェンダース監督:では今は小津作品の音楽は好きですか?

坂本龍一氏:まあそうですね。(笑)

ヴェンダース監督:私も音楽のことがいつも気になってました。ちょっと不思議な、フランス風だったり、平凡なタッチがあったり、昔のヨーロッパ映画や日本風のようなものがあったり、気にはなりましたが、最終的にはそれが作品の雰囲気であり、映画の一部であるので、好きになってしまうのです。

坂本龍一氏:はい、音楽は変えられませんね。(笑)やらなくてよかったです。

東京暮色

  本作品は小津監督作品の中でも“最も暗い” と言われておりまして、残念ながら 1957 年に公開された当時は、お客さまの評価も興行収入もよくありま せんでした。しかし、このあまり知られてない小津作品、「東京暮色」の中でも、今の時代が必要としている、 強いメッセージが作品内に込められていると思います。

【これまでにデジタル修復された小津作品ワールドプレミア上映】

小津安二郎監督作品のデジタル修復版は、2013年のベルリン国際映画祭の『東京物語』から世界三大映画祭クラシック部門へ7作目の選出となりました。

東京暮色

『東京暮色』のデジタル修復について

 松竹は小津安二郎監督作品『東京暮色』の35mmマスターポジをフル4Kで修復(4K解像度(4096×3112)スキャン、4Kデジタル修復、4KDCP)。画像修復は、川又昻キャメラマンと近森眞史キャメラマンが監修。
 音声修復は、35mmデュープネガから96kHz 24bitでデジタイズし、電源、キャメラ、光学編集、ネガのキズや劣化等、様々な要因によるノイズ、レベルオーバーによる歪みを、原因に立ち返って類推し、激減。小津安二郎監督の製作意図を尊重して修復する事を主眼に作業しました。

■小津安二郎監督作品『東京暮色』(英題:Tokyo Twilight)について

東京暮色 杉山周吉(笠智衆)には二人の娘がいる。姉の孝子(原節子)はしっかり者だが不幸な結婚に苦しみ、妹の明子(有馬稲子)は不実な学生にだまされ妊娠している。夫の部下と駆け落ちした母・喜久子(山田五十鈴)が現れ、明子は自分の父親が誰かさえ不安になり、明子は命を落とすという設定で、小津映画の中で、もっとも暗く悲観的な印象を残す、という意味では異色の作品。

1957 年 4 月 30 日公開作品
モノクロ/スタンダード/140 分

■監督:小津安二郎、脚本:野田高梧 小津安二郎、
 撮影:厚田雄春、美術:濱田辰雄、 音楽:斉藤高順
■出演:原節子、有馬稲子、笠智衆、山田五十鈴、
 高橋貞二、田浦正巳、杉村春子、山村聰、
 信欣三、藤原釜足、中村伸郎,