松竹シネマクラシックス

  1. トップ
  2. 没後25年相米慎二4Kレストア3作品劇場初公開決定!&ヴェネチア映画祭『魚影の群れ』ワールドプレミア上映レポート

没後25年相米慎二4Kレストア3作品劇場初公開決定!&ヴェネチア映画祭『魚影の群れ』ワールドプレミア上映レポート

カテゴリ:,

没後25年相米慎二4Kレストア
『魚影の群れ』 『東京上空いらっしゃいませ』 『あ、春』修復版が劇場初公開!

第83回ヴェネチア国際映画祭・『魚影の群れ』ワールドプレミア上映レポート
 
 
近年、日本のみならず世界中でその映画的魅力が<再発見>される相米慎二監督の傑作3本、『魚影の群れ』『東京上空いらっしゃいませ』『あ、春』の4Kデジタルリマスター版を、11/27(金)より、Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下ほか全国順次公開が決定たしました。あわせて相米慎二監督の命日である9/9(水)に、ティザービジュアルを解禁いたします。

没後25年を記念し、傑作3本がついに4Kレストアされて劇場初公開

『台風クラブ』『お引越し』などの名作が次々と4Kデジタル化し、フランスを始めとした海外でも公開されてヒットを記録。国内外の映画人に多大な影響を与え続ける伝説の映画監督・相米慎二。没後25年を迎えた今秋、待望の4Kデジタル修復を経て初公開となるのは、キャリアの初期、中期、後期をそれぞれ代表する3作品。

マグロの一本釣りに命を賭ける男たちの生と死、情熱的な女たちの世界を描いた人間ドラマで、開催中の第83回ヴェネチア国際映画祭クラシック部門に日本映画で唯一、選出された『魚影の群れ』

一度は天国に行ったものの、地上へ舞い戻り本当の自分を取り戻そうとする少女を描き、バブル時代の東京を背景にして初々しい魅力を放つ牧瀬里穂のデビュー作『東京上空いらっしゃいませ』

死んだはずの父親が現れたことから巻き起こる騒動をユーモアとペーソスで包み、松竹伝統の家庭劇スタイルで表現、1999年度キネマ旬報ベストテン1位に輝いた晩年の代表作『あ、春』の3本。

今回の4Kデジタル修復は、映像を35mmオリジナルネガから4K解像度(4096×3072)で高精細スキャンしたデータを元に修復、音声もオリジナル音ネガから96kHz24bitでデジタイズ後に丁寧なノイズ処理がなされたもので、撮影当時のスタッフやその関係者の監修のもと、松竹映像センターにて画・音声ともに修復が行われた決定版とも言うべき上映素材。

このたびの公開情報とともに、相米慎二監督の命日である9/9(水)に解禁となったティザービジュアルのデザインは、グラフィックデザイナーの畑ユリエが担当。『魚影の群れ』、『東京上空いらっしゃいませ』、『あ、春』の劇中で強い印象を残すモチーフ ~「漁船」「ワンピース」「ニワトリ」~ が散りばめられた、公開への期待を感じさせるデザインとなっている。
人と人が出会い、別れ、また出会う季節の巡り合いを描き、魔法のような映画的瞬間の数々に満ちた相米慎二監督のマスターピースが、待望の4Kデジタルリマスター版でスクリーンによみがえる。


■上映情報 

特集名:没後25年 相米慎二 4Kレストア
劇   場:Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下
公開日:2026年11月27日(金)~ 全国順次公開
 
 

■作品情報

『魚影の群れ 4Kデジタルリマスター版』 1983年/140分 英題:The Catch 4K Digitally Restored Version
脚本:田中陽造 出演:緒形拳、夏目雅子、佐藤浩市、三遊亭円楽、十朱幸代、下川辰平、矢崎滋

青森県下北半島最北端の漁港を舞台に、厳しい北の海で小型船を操り、孤独で苛酷なマグロの一本釣りに生命を賭ける海の男達と、寡黙であるが情熱的な女達の世界を描く。幾度か映画化を企画されながら断念されてきた吉村昭の原作を、相米慎二監督がついに壮大なスケールで製作した壮絶なドラマ。

『東京上空いらっしゃいませ 4Kデジタルリマスター版』 1990年/109分 英題:Tokyo Heaven 4K Digitally Restored
脚本:榎祐平 出演:中井貴一、牧瀬里穂、笑福亭鶴瓶、三浦友和、毬谷友子、出門英、谷啓

不慮の事故に見舞われた新人モデルは自分の死を受け入れられず、死神を騙して現世に舞い戻ってくるが……。少女の逡 巡や躍動を長回しのカメラで捉えるスタイルは不変ながら、幽霊になった彼女が生きることの歓喜を知っていく過程の描写には、それまでの相米作品とは異なる高揚感がある。

『あ、春 4Kデジタルリマスター版』 1998年/100分 英題:Wait and See
脚本:脚本:中島丈博 出演:佐藤浩市、山﨑努、斉藤由貴、富司純子、藤村志保、余貴美子、三浦友和

順調に証券マンとしての道を歩んできた男の下に、死んだはずの父親が突如現れる。時を同じくして彼の会社の経営状態も 悪化していく……。巻き起こる波紋の中、自分の人生を見つめ直す男とその家族の姿を描いたホームドラマ。1999年のベルリ ン国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞。


第83回ヴェネチア国際映画祭・『魚影の群れ』ワールドプレミア上映レポート

第83回ヴェネチア国際映画祭(9月2日~9月12日)クラシック部門(Venice Classics)にて『魚影の群れ 4Kデジタルリマスター版』(1983 年、英題:The Catch 4K Digitally RestoredVersion)ワールドプレミア上映が、9月3日14:15~(※現地時間)行われました。(SALA CORINTO)上映は高い注目を集めており、世界中の映画関係者が来場。会場は熱気に溢れました。
上映前には松竹株式会社の高川彩が登壇。本作について説明をいたしました。

ヴェネチア映画祭 上映前 舞台挨拶(松竹株式会社 海外事業部 グローバル営業室 高川彩)

Buongiorno a tutti!(みなさん、こんにちは)
Sono Aya Takagawa della Shochiku.(私は、松竹の高川彩です)

さて、相米監督は、ちょうど25年前の9月に53歳で惜しくも亡くなりました。監督は、生涯で13本の長編映画を残し、この『魚影の群れ』は、4本目の作品にあたります。すでにこの頃から、「独特な演出」が確立されていました。その「独特な演出」スタイルとは、カメラを止めずに撮影する「長回し」の多用です。監督自身は、「役者が用意してきた[嘘の演技]を剥ぎ取り、極限状態で見せる[本物の人間]を撮るためだった」と語っています。

この『魚影の群れ』は、私の数えたところ、100カット未満だと思います。逆に、これは非公式ではありますが、映画研究のショット計測データベースによると、同年のハリウッドの『Fast & Furious 7』は、約3,888カットもあると言われています。言うまでもなく、激しいカーチェイスや頻繁な場面転換(カット割り)は、観客の興奮を極限まで高めるために設計された演出です。AIによると、140分尺映画の平均的なカット数は、現代のドラマやサスペンス映画では、約1,800~2,500カットだそうです。

次に、この映画の印象的な「長回し」を3つほど挙げます。1つ目は、娘のトキ子が歌を歌いながら、自転車で港町の坂道を一気に滑降していく場面です。彼女がこの土地で確かに生きているという実在感を強く残します。2つ目は、房次郎と元妻が、偶然出くわし、土砂降りの中をひたすら追いかけ合うシーン。男女の断ち切れない愛憎と執念が、長回しによって鮮烈に表現されています。3つ目は、房次郎による、壮絶なマグロ漁のシーンです。仕掛けに食いついた巨大なマグロを一本釣りで引き寄せ、トドメのモリを打ち込むまでの格闘が、執拗な長回しで描かれています。

特に、最後のマグロ漁のシーンは、物語の核となる為、4K修復作業でもフィルム上に付着したゴミや傷の除去に最新の注意が払われました。波の繊細な動きや光を損なわずにゴミを丁寧に除去する作業は、修復作業の担当者によれば、非常に難度が高かったそうです。本作撮影監督の長沼六男氏に監修いただきました。音声修復においても、オリジナル音ネガからデジタイズし、経年劣化によるノイズを丁寧に処理しました。北の大海原に展開される人間ドラマに、より深みを与えています。音響効果は、故・小島良雄氏のご息女で、音響効果技師として現在活躍している小島彩氏と録音技師の小野寺修氏の両名が監修しています。

ぜひ、これらの長回しシーンを探しながら、この濃厚な人間ドラマに140分間没入してください。ちなみに、映画は、5分以上続く長回しから始まります。

そして、最後になりましたが、この作品を選んでくださった、ヴェネチア国際映画祭の関係者皆様にもお礼申し上げます、 Alberto Barberaさん と Federico Gironiさん、ありがとうございます。そして、フランス配給社・カルロッタ フィルム、イギリス配給社・BFI にもお礼申し上げます。
Grazie per la vostra attenzione(ご清聴ありがとうございました)

イタリア語の挨拶から始めると会場に笑いがおこり、和やかな空気のなかでのご挨拶となりました。