寅さんの旅 第一回 葛飾柴又への旅|松竹映画『男はつらいよ』公式サイト| 松竹株式会社

男はつらいよ

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寅さんの旅 第一回 葛飾柴又への旅

純情詩集_0002

寅さんは旅人です。トランクひとつで、北は北海道から南は九州沖縄まで、まさに「風の吹くまま、気の向くままに」旅を続けています。「男はつらいよ」シリーズ全48作で、行っていないのが富山県、高知県、そして埼玉県だけです。

車寅次郎は、16歳のとき父・車平造とふとしたことで大げんかして、生まれ故郷、葛飾柴又の実家から家出。それからは旅の暮らしを続け、いつしかテキ屋となり渡世の日々を過ごしています。

「四谷赤坂麹町、チャラチャラ流れる御茶ノ水」でおなじみ、歯切れの良い啖呵売は、その日、その日を生きてゆく寅さんの知恵と技術の賜物なのです。

そんな寅さんが20年ぶりに、柴又に帰ってきたところから、第1作『男はつらいよ』の物語が始まります。映画では描かれていませんが、二十年間、放浪を続けてきた寅さんにとっては、実はこの帰郷こそ「故郷への長い旅」だったのかもしれません。

「寅さんの旅」と題したこのコラム。最初の旅は、寅さんの故郷・葛飾柴又です。

寅さんが帰ってくるとき、江戸川堤を懐かしさいっぱいに歩いてきます。おそらく国鉄(現在のJR・金町駅)から歩いてくるのでしょう。悠々たる江戸川の流れ、昔と変わらない風景。スクリーンを眺めている僕たちも、寅さんが感じているであろう“懐かしさ”に包まれます。タイトルバックの終わりには、大抵、帝釈天題経寺の二天門が大写しにされます。「原作・監督 山田洋次」の部分です。

僕たちは居ながらにして、寅さんとともに、江戸川堤を歩いて、帝釈天を参詣しているのです。そして“くるまや”の人々と再会、物語の中に入って行くのです。

葛飾柴又は、京成金町線で、高砂から一駅です。営業キロにしてわずか2.5キロの路線、京成高砂駅から金町までの三駅の真ん中の駅です。明治30(1897)に、日本最初の私鉄・日本鉄道が金町駅を開業。柴又帝釈天への参詣客が増えて、その便をはかるために、明治32(1899)に帝釈天人車鉄道が敷設され、金町と柴又の間で運行が開始されました。客車は一両で六人乗り、一人で押して乗客を運んだそうです。葛飾柴又・寅さん記念館に、この人車鉄道がほぼ等倍で再現されています。

さて、京成柴又駅は、映画の中にも毎回登場します。寅さんを訪ねて、マドンナや、旅先で出会った人が降り立つシーンがあります。

第15作『男はつらいよ 寅次郎相合い傘』では、寅さんと喧嘩したリリー(浅丘ルリ子)が帰ってくるときに、雨が降っています。どこかへ行っていた寅さんが、“とらや”に現れて、番傘を持って駅までお出迎え。もう二度と口も利かない、ぐらいの勢いだった寅さんが神妙な顔で傘をさしかけます。リリーの顔がパッと輝く瞬間。僕たちは、ああ、良かったなぁ、としみじみ幸福な気持ちに包まれるのです。

駅を降り立って、参道を歩いて見ましょう。源ちゃんが御前様と歩いた帝釈天参道。「よお、相変わらず馬鹿か?」と備後屋さんにかける寅さんの声が聞こえてきそうです。団子屋の中から、タコ社長が「大変、大変、税務署行かなくっちゃ」と慌てて出てくるような、そんな気持ちになります。

柴又を訪ねると、僕たちが感じるのは、映画のロケ地を訪ねている、というだけでなく、映画の中、寅さんたちの暮らしの中に入り込んでしまったような、心地よさを味わうことができます。

参道のお団子屋さん、帝釈天題経寺、江戸川・・・。映画の中を旅するような、そんな不思議な体験をすることができます。そして、柴又散策の折には、ぜひ葛飾柴又・寅さん記念館をたずねてみてください。映画で使用した本物の“くるまや”のセットが再現されています。そこに佇むだけで、実に楽しい時間を過ごすことができる筈ですから・・・。

 

文 佐藤利明(娯楽映画研究家)


 

チラシ0829

今年も『寅さんサミット』開催!

2016年26日(土)、27日(日)

柴又を満喫できる2日間!今年はスタンプラリーで柴又散策も楽しめます。