歓呼の町

疎開で人の姿が消えていく街の中で
健気に生き続ける人々の慈愛に満ちたエール

見どころ

疎開を奨励する戦時下にも関わらず長年住み慣れた町を愛し、人を愛する
人間の優しさを描いた

あらすじ&解説

人々が次々と疎開でいなくなっていく町の一角に、失踪した夫の帰りを待ち続ける母きよと息子の慎吾、長年続いた商売を守ろうとする風呂屋や印刷屋などの姿があった。やがてきよの夫が町に帰ってきて、皆は喜ぶのだが……。 戦局が悪化していく中、疎開促進の国策映画として企画された群衆劇。監督は当初大庭秀雄が予定されていたが、諸事情で木下惠介が登板することになった。とはいえ、ここで繰り広げられる庶民の様子はタイトルとは裏腹に、静謐でつつましやかなもの。木下監督は森本薫のオリジナル脚本を気に入り、乗りに乗って撮影に臨んだという。もっとも公開時は「勇ましさに欠ける」として内閣情報局からクレームも来た。どのような時代であろうとも庶民の優しさを描き続ける木下映画の芯の強さは、戦争に携わる者たちの意向とは真逆のものでもあったのだ。

公開日
1944年06月08日
本編尺
73分
受賞歴
キャスト
上原謙 水戸光子 東野英治郎 信千代 小堀誠 飯田蝶子
スタッフ
監督:木下惠介
脚本:森本薫
撮影:楠田浩之