この天の虹

あの煙は本当に天の川だったのか?製鉄所で働く人々が織り成す群像劇!

見どころ

工場から立ち上る七色の煙に希望を委ねていた
高度経済成長期を背景に描かれる高度経済成長時代へ突入する戦後昭和の真実の姿

あらすじ&解説

北九州の八幡製鉄所に勤める須田は、先輩の相良が想いを寄せる千恵との仲を取り持とうとする。一方、千恵には町村という恋人がいるのだが、彼はブラジルに赴こうとしていた……。 八幡製鉄所(現・新日本製鉄)の社宅に住む人々の愛をオールスター・キャストで追っていく群像ホームドラマ。本作が製作された1958年はまさに日本が高度経済成長期に突入しようとしていた時期で、環境汚染の概念もなかった当時において工場から立ち上る七色の煙は明るい未来の象徴とされていた。ただし、自作で常に雲の動きにこだわり続ける木下惠介監督は大空を舞う煙に美を見出しつつも、「あの煙は本当に天の虹なのか?」と製鉄所の巨大機構におののきがちな須田(川津祐介/これがデビュー作)を通して「人間は機械やシステムに呑みこまれてはいけない」というメッセージを盛り込むことも忘れていない。当時の日本人の力強い姿がリアルに描出されている。

公開日
1958年10月28日
本編尺
106分
受賞歴
キャスト
高橋貞二 久我美子 田村高廣 大木実 田中絹代 川津祐介 笠智衆
スタッフ
製作: 小梶正治
監督・脚本: 木下惠介
撮影: 楠田浩之
照明: 豊島良三
音楽: 木下忠司
録音: 大野久男
美術: 梅田千代夫
編集: 杉原よ志
監督助手: 大槻義一、上村力