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連載「女ひとり、名画座行ってきます。」
【シネマヴェーラ渋谷の巻/前編】

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今日やって来たのはここ!

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前の記事の流用じゃありませんよ!今日は以前ご紹介した「ユーロスペース」さんの1階上にある名画座「シネマヴェーラ渋谷」さんに来たんですよ!

お伺いした日はいきなり寒さが緩んだ4月中旬。突然の夏日に対応しきれなかった私の体は汗と花粉症でベタベタのズルズル。そんなドロドロの私を爽やかに迎い入れてくださったのは、支配人の内藤由美子さんであります。

ゴダールLOVEの映画少女が、東映ヤクザ映画を編成

実はシネマヴェーラ渋谷は、内藤さんとご主人・篤さんのご夫婦で運営している珍しい映画館。そもそもは旦那さんの映画愛が昂じて映画館をはじめることになったそうですが、オットが映画館やると聞いた時、発狂しませんでしたか?

「好きにすればって感じでしたね(笑)。私自身はさほど邦画に詳しくもなかったですし、はじめは夫の補助的な感じで事務仕事を手伝っていたんです。でも、外注で作ったポスターの出来があんまりにも良くなくて、なんの根拠もないのに『コレだったら私の方が絶対に良いもの作れるわ!』と思ってしまって(笑)。それからイラストレーターやフォトショップを勉強して本格的にポスター作りなんかも手伝うようになりました」(内藤由美子支配人/以降「」内同氏)

シネマヴェーラ渋谷の受付&ロビー。取材日は平日のお昼にもかかわらずお客さんでいっぱいでした。

シネマヴェーラ渋谷の受付&ロビー。取材日は平日のお昼にもかかわらずお客さんでいっぱいでした。

いま上映している「抗争と流血-東映実録路線の時代-」※も松方弘樹さんドーンでかっこいいですよね。内藤さんの可憐な雰囲気からこんな漢らしいものが出てくるとは思えないです(写真上/※現在は終了)。

「もともとヤクザ映画をはじめ邦画はほとんど観てなくて、ゴダールとかを愛しているような少女でした(笑)。

そんな自分がシネマヴェーラの編成をやることになったのは、ずっとひとりでプログラミングをしてきた夫のアイデアが出尽くしてしまったところが大きくて。それでなし崩し的に自分が引き継ぐことになったんですが、ちょうどその時子育てや介護も一段落して、もう一度仕事に向きあえるタイミングでもあったんです」

特別に映写室にも入れていただき、見学させてもらいました。

特別に映写室にも入れていただき、見学させてもらいました。

いまだに商売だとは思ってない

以前、やはり個人で映画館の運営に乗り出した横浜シネマリンの八幡温子支配人も仰ってましたが、プログラミングとともに経営も大変だと…。

「いまだに商売だと思ってない…と言うとあまり良くないのかもしれませんが、うちにとってはまだまだ夫婦の余暇に過ぎないなと。完全に家内制手工業で、ポスター作りや編成、字幕つけ作業、ゲストのブッキングからなにからなにまで2人でやっていますけど、夫婦ともどもオープンから一度も、シネマヴェーラの経営で収入を得たことはありません。黒字になったのもここ3年の話で、それまではずっと赤字でしたしね。

ただ、経営に関しては夫より私の方がこだわっていて(笑)、どうせやるならたくさん集客したいっていう野心がある。おかげで今は相当時間をかけてプログラミングできていることもあって、告知や盛り上げ方がうまくできるようになってきました」 

ここまで手塩にかけてきた映画館だけに、将来は親子2代で映画館経営ってこともありえそうですか!

「どうでしょう(笑)。あんまり継がせたいとか遺したいってこだわりはないんですよ。

それよりもとにかく若い人に来て欲しいって気持ちが強くて、実は渋谷で映画館を開いたのも、若者の街だからって理由が大きいんです。だからうちの料金は2本立てで大人は1500円ですが、中学生以下は500円、大学生・高校生は900円という若者応援価格。

自分の子どもが大学生ということもありますが、今の若い子はとにかく大変ですよね。社会保険料は軒並み上がっているのに、お給料は据え置き。老人ばかりが優遇されるような施策ばかりで、若い人たちは本当にしんどいと思いますよ。だからこそ、全力で応援したい(笑)。

あと、“暇だから来る映画館”にしたくないって思いもあります。“安く時間を潰す場所”になってしまうと館内の空気も淀みますし、今後の映画ファンを育てることにはならないですからね」

あうう…。国保貧乏の自分もまじで激しく同意です!次回はそんなシネマヴェーラ渋谷さんが贈る注目のラインナップと、おすすめショップをお伝えしますよ!

 


■シネマヴェーラ渋谷(http://www.cinemavera.com/

東京都渋谷区円山町1‐5

KINOHAUS(キノハウス) 4F

(03)3461-7703

(取材・文/小泉なつみ)


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