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第74回ヴェネチア国際映画祭 『お茶漬の味』4Kデジタル修復版 ワールドプレミア上映レポート

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第74回ヴェネチア国際映画祭クラシック部門

小津安二郎監督作品『お茶漬の味』4Kデジタル修復版 ワールドプレミア上映レポート

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第74回ヴェネチア国際映画祭クラシック部門にて小津安二郎監督作品『お茶漬の味 4Kデジタル修復版』(1952 年、英題:The Flavor of Green Tea over Rice)のワールドプレミア上映が9月3日に行われました。

 

坂本龍一さんがご登壇され、上映前のスピーチをしていただきました。

上映会場であるSALA CASINOの149席は、満席となり、入場できずに帰る人も沢山いらしたようです。上映前にSALA CASINOロビーにてフォトコールが行われました。

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(写真左からヴェネチア国際映画祭クラシック部門ディレクター:ステファノ(Franciadicelle Stefano)氏、ヴェネチア国際映画祭ディレクター:アルベルト(Alberto Barbera )氏、坂本龍一氏、松竹株式会社メディア事業部コンテンツ版権室海外版権課小松士恩)

 

上映前スピーチ概要(日本語翻訳:松竹)

■松竹株式会社メディア事業部コンテンツ版権室海外版権課小松士恩

こんにちは。松竹映画「お茶漬の味」4Kデジタル修復版、ワールドプレミア上映にお越し下さり、ありがとうございます。

本作品は、1952年に公開された小津安二郎監督作品で、当時日本国内で興行収入2位となったヒット作です。

今回は、現存するなかで最も古い素材である、音付きの35mmマスターポジから4Kデジタル修復を行いました。

本作品のオリジナル脚本は、第二次世界大戦中1939年に書かれましたが、戦意高揚の内容でなく、妻たちが戦時中の模範的な態度ではない、ということから日本政府の検閲により実現しませんでした。

小津安二郎と野田高梧は、戦後の日本に合わせたかたちで脚本を修正しつつも、元々あった夫婦の愛、戦争の影という小津映画にとって大事な要素を決して変更することはありませんでした。それが小津監督のすごいところでもありました。

 ヴェネチア映画祭ディレクターのアルベルトさん、ヴェネチア映画祭クラシック部門ディレクターのステファノさん、本日の上映のために尽力してくださったヴェネチア映画祭のスタッフの方々、修復を助成してくださった国際交流基金、ご協力くださった「Ruichi Sakamoto: CODA」関係者のみなさま、そして最後にご来場の皆様にあらためて御礼申し上げます。どうぞごゆっくりご鑑賞ください。

 

■坂本龍一氏

小津監督の傑作の修復版完成おめでとうございます。でも小津監督の作品はすべて傑作です。私は小津監督の作品が大好きです。

何年も前のことですが、日本の素晴らしい作曲家である武満徹さんと、ロンドンで話した時、小津作品のサウンドトラックをすべてもういちど作曲してみたい、と意見が一致しました。二人とも(サウンドトラックが)あまり好きではなかったのです。小津作品は、映像が非常に特徴的なのに対して、音楽が平凡に思えたのです。残念ながら、その会話の数年後、武満さんは亡くなり、実現はしませんでした。

現在、私の考えは変わりました。つまり、私たちは間違っていたのです。小津作品のサウンドトラックは緻密に計算され、わざと普通に聞こえるようにできているのだと思います。繰り返しますが、私たちは間違っていました。オリジナルサウンドトラックの小津作品を見ることはとても幸せなことです。

皆さんお茶漬けをご存知でしょうか。お茶漬けは、茶碗に入れたご飯に緑茶をかけるものです。日本では、一番きどらない、しかもおいしい食べ物です。私の父は、夜中の3時に酔っぱらって帰ってくると、母に作ってくれとよく頼んでいました。お茶漬は親密さの証です。映画をお楽しみください。

 

坂本龍一さんの素敵なスピーチに会場の皆さんも大変喜ばれ、上映終了後には観客から自然と拍手がわきおこり、盛況のうちに上映を終えました。

 

坂本龍一さんを追ったドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』は、ベネチア国際映画祭のアウト・オブ・コンペティション部門にて公式上映されました。

映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』は11月4日より角川シネマ有楽町ほか全国公開されます。こちらも気になりますね。

詳しくはこちら:http://www.kadokawa-pictures.jp/official/ryuichisakamoto/

 

なお、今年のヴェネチア国際映画祭クラシック部門には、「赤い砂漠」(1964年、ミケランジェロ・アントニオーニ監督)、1900年(1976年、ベルナルド・ベルトルッチ監督)、「悪意の眼」(1962年、クロード・シャブロル監督)、「La donna scimmia (The Ape Woman) 」(1964年、マルコ・フェレーリ監督)「彼女について私が知っている二、三の事柄」(1967年、ジャン=リュック・ゴダール監督)、「ロジタ」(1923年 、エルンスト・ルビッチ監督)、「近松物語」(1954年、溝口健二監督)、「山椒大夫」(1954年、溝口健二監督)、「未知との遭遇」(1977年、スティーヴン・スピルバーグ監督)等の名作とともに「お茶漬の味」は選出されました。

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日本でご覧いただけるよう準備をしております。詳細が決まりましたら、このサイトにてお知らせいたしますので、お楽しみにお待ちください!