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怪談
原作:小泉八雲
脚本:水木洋子
撮影:宮島義勇
音楽:武満徹
美術:戸田重昌
出演:新珠三千代、渡辺美佐子、三国連太郎、仲代達矢、岸惠子、中村賀津雄、丹波哲郎、志村喬、中村翫右衛門
1965/カラー/182分/シネスコサイズ/にんじんくらぶ=東宝
© 1965 TOHO CO.,LTD.
小泉八雲の同名小説の中から『黒髪』『雪女』『耳無し芳一』『茶碗の中』の4編を映画化した怪奇オムニバス映画超大作。小林監督初のカラー映画で、豪華絢爛たるセットを駆使した幻惑的画面の数々が見る者を圧倒する。構想10年、9か月の撮影期間によって製作費は大幅に超過し、にんじんくらぶを解散に追い込んだ曰くつきの作品でもある。長らくカンヌで上映された短縮版が出回っていたが、国内DVD化の際、ようやく完全版がリリースされた。
《受賞》
キネマ旬報ベストテン第2位
毎日映画コンクール撮影賞:宮島義勇
同 美術賞:戸田重昌
日本映画技術賞:中村明
カンヌ国際暎映画祭審査員特別賞
ローマ国際映画祭監督賞:小林正樹
アカデミー賞外国語映画賞ノミネート
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上意討ち -拝領妻始末-
原作:滝口康彦
脚本:橋本忍
撮影:山田一夫
音楽:武満徹
美術:村木与四郎
出演:三船敏郎、司葉子、加藤剛、仲代達矢、神山繁、三島雅夫
1967/カラー/121分/シネスコサイズ/三船プロ=東宝
© 1967 TOHO CO.,LTD.
会津藩馬廻り役の笹原家に藩命で嫁がされた主君の側室を、家の者たちは優しく受け入れた。しかし数年後、今度はいきなり返上せよとの勝手極まる理不尽な命が下り、憤った家の者たちが反旗を翻し、悲劇的顛末を迎える。『切腹』に続いて滝口康彦の『拝領妻始末』を原作とし、改めて封建制度の非人道性を説いていく時代劇大作。そこには先の戦争へ至った日本人独自の精神構造を突き詰めていこうとする小林の意図もこめられているようだ。
《受賞》
キネマ旬報ベスト・テン1位
同 監督賞:小林正樹
同 脚本賞:橋本忍
毎日映画コンクール日本映画賞
ヴェネチア国際映画祭国際映画批評家協会賞
英国映画協会賞
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日本の青春
原作:遠藤周作
脚色:廣澤榮
撮影:岡崎宏三
音楽:武満徹
美術:小島基司
出演:藤田まこと、新珠三千代、黒沢年男、酒井和歌子、佐藤慶、田中邦衛、奈良岡朋子
1968/モノクロ/129分/シネスコサイズ/東京映画
© 1968 TOHO CO.,LTD.
原作は遠藤周作の『どっこいショ』。戦時中、上官に殴られて耳をつぶし、戦後は事なかれ主義者として、妻子に疎まれながらも平凡な日々を過ごしてきた戦中派の男を主人公に、戦争によって青春を奪われた世代の哀歓をアイロニカルに奏であげていく社会派ヒューマン映画。これまで超大作を連打してきた小林としては、久々に肩の力を抜いて手掛けた感もある小品佳作で、監督自身、大のお気に入りの作品とのことである。
《受賞》
キネマ旬報ベスト・テン7位
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いのち・ぼうにふろう
原作:山本周五郎
脚本:隆巴
撮影:岡崎宏三
音楽:武満徹
美術:水谷浩
出演:仲代達矢、栗原小巻、酒井和歌子、中村翫右衛門、勝新太郎、神山繁
1971/モノクロ/121分/シネスコサイズ/東宝=俳優座
© 1971 TOHO CO.,LTD.
山本周五郎の小説を原作に、世間からつまはじきされている深川安楽亭の人々が、女衒に売られた幼馴染を助けようとする若者の純情に胸を打たれ、危険な仕事に手を染めていくピカレスク時代劇。人は大なり小なり誰かのために命を棒にふるものであり、それはときに美徳となることを訴えるあたり、小林ならではの純粋な理想論として映えているが、河原に一軒ごと丸組みの家を建てて撮影するというのも、この巨匠ならではの完璧主義ぶりであった。
《受賞》
キネマ旬報ベスト・テン5位
毎日映画コンクール撮影賞:岡崎宏三
同 音楽賞:武満徹
同 録音賞:西崎英雄
伊タオルミナ国際映画祭審査員特別賞
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化石
原作:井上靖
脚本:稲垣俊、よしだたけし
撮影:岡崎宏三
音楽:武満徹
出演:佐分利信、岸惠子、井川比佐志、山本圭、栗原小巻、小川真由美
1975/カラー/201分/スタンダードサイズ/四騎の会=俳優座
(尺数は劇場公開版の表記。これ以外に217分尺のディレクターズ・カット版が現存)
© 株式会社 仕事
井上靖の同名小説を原作に、不治の病に侵された初老の社長が、ヨーロッパを旅しながら生と死を見つめ直すさまを描いた全8話のTVドラマを、劇場用映画として再編集した作品。黒澤明、木下惠介、市川崑と共に結成した「四騎の会」でそれぞれTVドラマを作ることになって企画されたものだが、そもそもTV嫌いを公言していた小林としては、最初からこれを映画として劇場公開することを画策しながら撮影していた。
《受賞》
キネマ旬報ベスト・テン2位
同 主演男優賞:佐分利信
毎日映画コンクール日本映画賞
同 男優主演賞:佐分利信
同 撮影賞:岡崎宏三
同 音楽賞:武満徹
芸術選奨文部大臣賞
ブルーリボン賞作品賞
優秀映画鑑賞会最優秀作品賞
同 特選
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燃える秋
原作:五木寛之
脚色:稲垣俊
撮影:岡崎宏三
音楽:武満徹
美術:村木忍
出演:真野響子、佐分利信、北大路欣也、小川真由美、上条恒彦、三田佳子、芦田伸介、井川比久志
1978/カラー/137分/ヴィスタサイズ/三越=東宝
五木寛之の同名ベストセラー小説を原作に、親子ほど年の離れた男との愛人生活に疲れたヒロインが、男の死後イランへ旅立ち、5000年の歴史を誇るペルシャ文化とペルシャ絨毯に魅せられ、やがて自立していくまでを描いた映画。小林監督作品としてはもっともスケールの大きなメロドラマであったが、ドラマ性よりフィーリング重視の映画でもあったため、「最高に苦労した作品」と、監督も公開当時に吐露している。ハイファイセットの主題歌も話題となった。
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東京裁判
原案:稲垣俊
脚本:小林正樹、小笠原清
音楽:武満徹
ナレーター:佐藤慶
1983/モノクロ/277分/スタンダードサイズ/講談社
© 1983講談社
戦後日本の運命を決定づけた極東国際軍事裁判の全貌を描いた記録映画。アメリカ国防省が所蔵していた裁判関係の膨大なフィルムを用いた映画を講談社が企画し、かつて劇映画『東京裁判』に着手するも成就できなかった小林に白羽の矢が立ったもの。勝者が敗者を裁く矛盾もさながら、先の戦争に対して未だに歴史としての決着をつけられない日本人に向けて、小林は「罪という名の十字架を背負うことを忘れるな」と説いているかのようである。
《受賞》
キネマ旬報ベスト・テン4位
ブルーリボン賞作品賞
日本映画ペンクラブ作品賞
毎日映画コンクール優秀作品賞
映画サークル特別推薦
藤本真澄賞:須藤博、荒木正也、安武龍
優秀映画鑑賞会特選
芸術選奨文部大臣賞:浦岡敬一(編集)
ベルリン国際映画祭国際映画批評家賞
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食卓のない家
原作:円地文子
脚本:小林正樹
撮影:岡崎宏三
音楽:武満徹
美術:戸田重昌
出演:仲代達矢、小川真由美、中井貴恵、中井貴一、大竹しのぶ、平幹二朗、岩下志麻
1985/カラー/145分/ヴィスタサイズ/MARUGENビル
連合赤軍のあさま山荘事件をモデルにした円地文子の同名小説を原作に、長男がテロ事件に加担していたことで周囲から非難を浴びながらも、成人に達した者の犯罪は家族と関係ないとする父の信念と、それゆえの家族の苦悩を描いた小林の遺作。社会に対して家族で責任を取ろうとする日本人の精神的土壌性に異を唱えてリベラルな理想を貫くことの難しさを訴えつつ、最後には人間愛を信じようという、揺るぎなき小林映画であった。
《受賞》
日本アカデミー賞最優秀音楽賞:武満徹
(文筆:増當竜也)